クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「お邪魔します」
 パンプスを脱ぎ、白い大理石の玄関ホールに上がる。
 広い廊下の先にはいくつもドアがあり、玄関から三歩でキッチンと部屋に突き当たる私の狭い部屋とは大違いだ。

「いつまでそこにいる。中に入れ」
 廊下の突き当りのドアが開き、隼人さんが姿を見せた。なんと紺色のエプロン姿。それからニンニクのいい香りもしてくる。
 まさか隼人さんが料理?

 匂いにつられるようにドアの先の部屋に入ると、広い空間があった。壁一面の大きな窓からは品川の街並みと、敷地内の手入れの行き届いた中庭が見えた。
 床は落ち着いた色味の天然木で、温かみを感じる。

「もう少しで出来る。そこに座っててくれ」
 キッチンから隼人さんの声がして、忙しそうに料理をしていた。
「手伝いましょうか?」
「大丈夫だ」
 きっぱりと私の申し出は断られ、仕方がないので、広いダイニングテーブルに腰を下ろした。テーブルの上には二人分のランチョンマットが敷かれていた。
 まさかお昼ご飯を用意してくれたのだろうか?
「待たせたな」
 そう言って隼人さんが私の前に料理を並べる。真鯛のカルパッチョ、雲丹のクリームパスタ、バゲットだ。
 どのお皿も綺麗に盛りつけされていて、一瞬、ここは高級リストランテかと思った。
「白ワインのいいのがあるが、どうする?」
 ワインの誘いに私は首を振った。
「……この後、契約があるので遠慮します」
「確かにそうだな。水にしよう」
 洒落たワイングラスに隼人さんが緑色の瓶のミネラルウォーターを注いでくれる。
「あの、これ全部、隼人さんが作ったんですか?」
「そうだ」
 向かい側に座った隼人さんがクスッと笑みを浮かべた。
「……お料理するんですね」
「偶にな。今日は瑞希の為に料理したから、遠慮なく食べてくれ」
 私の為と言われて、鼓動が強く脈打った。
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