クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「胃袋も満たされたことだし、契約の話をしよう」

 食事の後、隼人さんに促されてリビングのソファに移動した。
 エプロンを外した隼人さんはラフなチャコールグレーの二ットに黒のチノパン姿で、そういう服装も素敵だと思った。

「ところで、俺が買った服、着てくれたんだな」
 コーヒーを私の前に置くと、隼人さんは私の服に視線を向けた。

「……隼人さんに会うので」
 改めて口にすると恥ずかしい。

「あの、契約恋人の仕事だからって意味ですよ」
 慌ててそう付け加えると、隣に座る隼人さんが口の端を上げた。

「瑞希に下心がないのはわかっているよ」
 下心と言われて、カアッと顔が熱くなる。なんでこの人は私の心を逆撫でするようなことを口にするのか。

「ある訳ないでしょ!」
 私の叫び声に隼人さんが笑う。

「そう目くじらを立てるな。それにしても、よく似合っているな。試着した時も良かったが、今日はさらに素敵だ」

 ロデオドライブの高級ブティックで試着したことを思い出す。
 私はワンピースに抵抗があったけど、隼人さんが絶対に似合うと言うから選んだものだ。
 隼人さんはあの時と同じように真剣な眼差しを向けてくる。

「そんなに見ないで下さい……恥ずかしいので」
 俯いて小さな声で口にすると、「すまん」という少し慌てたような隼人さんの声がした。

「これが契約書だ。まずは確認してくれ」
 書類を取り出した隼人さんが私に差し出した。そこにはいくつかの条項が並んでいる。

【第一条: 乙(南雲瑞希)は、甲(高月隼人)の恋人として振る舞うこと
 第二条:契約期間は報酬支払い日、四月二十日から七月二十日までの三ヶ月間とする。
 第三条:期間中、乙は甲の指示に従い、公の場や親族の前で適切な演技を行うこと
 第四条:この契約が終わるまでは乙と甲は秘密を保持すること
 第五条:契約期間中は乙と甲は異性との交流は控えること
 第六条:恋人として周囲の疑いの目を取り除く為に乙は甲と適切なスキンシップを取ること
 第七条:契約期間内は乙は甲と週一でデートすること】

 最後まで契約書に目を通し、まずは三ヶ月の期間について疑問をぶつけた。
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