クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「白鳥副社長!」
 私たちの近くに来たのは白鳥綾音の父、白鳥太蔵(たいぞう)だった。
 恰幅のいい体から放たれる威圧感に背筋が伸びる。表面上はにこやかだけど、目の奥は鋭く、私を品定めするように観察していた。

「今日は二人ともご苦労様。舞台袖から二人の掛け合いを見せてもらったよ。恋人らしく息の合ったやり取りだった」
 恋人という言葉が明らかな嫌味に聞こえ、頬が強張りそうになる。
「副社長にそう言っていただけて光栄です」
 隼人さんが私の肩を抱きながら、牽制するように白鳥副社長に視線を送る。

「本当、息が合っていたわ」
 副社長の隣にいた綾音も会話に入ってくる。
「でも、隼人と南雲さんって、いつから付き合っているの?」
 綾音が笑顔のまま、まっすぐ私を見つめて来た。
「それは一年前からだって、説明しただろ?」
 隼人さんが綾音を見る。
「私は南雲さんに聞いているのよ」
 綾音に見つめられ、無言の圧力を感じる。
 強張りそうになる表情をぐっと堪えて笑顔を作った。
「隼人さんの言う通り、去年の四月から付き合い始めたんです」
 事前に隼人さんと決めていた交際期間を口にすると、綾音が不思議そうに首を傾げた。
「南雲さんがB787のコーパイになったのって先月からでしょ? 一年前はB737でしたよね。隼人と接点があったんですか?」
 そのことについても隼人さんと相談して決めてあった。
「実は隼人さんと行きつけの定食屋さんが同じで、それでカウンターで隣に座ることもよくあって、お互いにパイロットだって知ったら意気投合しちゃって。ね、隼人さん」
 隼人さんが私の話に合わせるように頷いた。
「そうなんだ。瑞希と空の話をしていたら、自然と惹かれていって。それで俺から交際を申し込んだんだ」
 綾音が両眉を上げ、大袈裟な表情を作った。
「隼人から交際を申し込むなんて珍しい。隼人は学生の頃からいつも沢山の女の子につき合って欲しいって言われていたのに」
 幼馴染であることを誇示するように言ってくる綾音に少しだけムカッとする。私よりも隼人さんのことをよく知っていると言いたげだ。
「瑞希は特別なんだ」
 慈しむような視線を向けられ、僅かに脈拍が上がる。お芝居だとわかっていても、隼人さんの端正な顔で見つめられればドキドキしてしまう。
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