クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「……どうした?」
 顔面蒼白の私を隼人さんが心配そうに見た。

「あの、お願いがあります。飛行機を撮るふりをして、後ろの家族を撮ってくれませんか?」
 震える声で頼むと、隼人さんは不思議そうな顔をしたが、黙ってスマホを構えてくれた。

「ほら、離陸の瞬間が撮れたぞ」
 そう言って、隼人さんが私にスマホを見せてくれる。
 画面に映っているのは飛行機ではなく、父の横顔と5歳くらいの男の子、そして髪の長い女性の後ろ姿だった。

「ママ、あれはトリプルセブンだよ」
 男の子の弾んだ声を聞いて胸が締め付けられる。
 ママと呼ばれた女性は私たちを捨てるほど、父にとって大切な女性だと思ったらやるせない。

 母が父が出て行った理由を私に話さなかったのは、父を慕っていた私を傷つけないように気遣ってくれたからなんだ。
 こんなのって酷い……。私は父にとって、もう、いらない家族なの?
 じわりと涙が込み上がる。

「航はよく知っているな。将来はパイロットになるか?」
 父が口にしたパイロットという言葉に涙が溢れた。昔、同じことを父に言われた。
 顔を上げていられず、俯くと隼人さんがハンカチを差し出してくれた。

「……ごめんなさい。私、これ以上、ここにいられません」
 カレーを半分残して、席を立った。

「ねえ、パパ。青空教室のパイロットの話、面白かったよ」
 航と呼ばれた子がそう話しているのが耳に入り、私は隼人さんのハンカチで顔を隠して、レストランを後にした。
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