クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 壁一面に広がる大きな窓の向こうには、宝石を散りばめたような滑走路の誘導灯が続き、夜空へと飛び立っていく機体のシルエットが鮮やかに浮かび上がっている。

 私は今、成田空港近くのホテルにいるが、あまりに部屋が広すぎて落ち着かない。このとんでもなく豪華なスィートルームは、翌朝早朝に成田からソウルへ飛ぶフライトを控えた隼人さんが個人的に取ったものだ。
 私がこの豪華な客室に来ることになったのは、隼人さんのシャツを私の涙で派手に濡らしてしまったことに起因する。

「とりあえず落ち着ける所に行こう」
 そう言われて、特に深い考えもなくついて来た訳だが、まさかこんなVIP空間に招かれるとは思わなかった。
 優に20帖はありそうなリビングルーム。その中央にある上質な革張りの広いソファの端にちょこんと腰を下ろしているが、ふかふかの絨毯に沈む自分の足さえも場違いな気がする。

「……落ち着いたか」
 部屋の豪華さに圧倒されていたら、バスローブ姿の隼人さんがリビングに入って来た。濡れた髪をタオルで拭う姿からは無防備な色気が溢れていて心臓が大きく跳ねる。

「はい。あの、隼人さん、シャツ本当にすみませんでした」
「さっきも言っただろう。気にするな。それよりルームサービス取るか? 腹が減っているだろう?」
 言われてみればもう夕食の時間で、微かに空腹を感じる。
「その顔では、レストランには行けないだろうしな」
 隼人さんが泣き腫らした私の顔を見て、クスリと笑う。
「……見ないで下さい。めっちゃブサイクですから」
「可愛いよ」
 隣に腰掛けた隼人さんが、私の頭を撫でる。なんだか小さな子どもになった気分。
「もうっ、面白がっているでしょ」
「そうだな。ちょっと面白い」
 ぐしゃぐしゃと大きな手が私のショートカットの髪を乱すように撫でまわす。
「うわっ、髪が崩れる」

 抵抗すると隼人さんが「瑞希を見ていると昔飼っていたゴールデンレトリバーを思い出す」なんて言うから、犬扱いをされているんだと思った。可愛いと言ったのもゴールデンレトリバーとして見ているからだ。

「もうっ、やめて下さい」
 ぷいっと膨れると隼人さんが私の頭から手を下ろし、じっと見つめてくる。
 睫毛の長いキリッとした目に見つめられ、至近距離で見るイケメンは危険だと思った。
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