クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 覚悟を決めて、ギュッと目を閉じたその時。

「……すまない」

 低く掠れた声がして、ふっと気配が遠のいた。
 目を開けると気まずそうな表情を浮かべる隼人さんがいた。

「二人きりでいる時に、恋人のスキンシップは必要ないよな」

 契約条項にあることを言われて、慌てて頷く。

「そ、そうですよ。白鳥さんもいないですし」
「そうだな。……さっき綾音の前でキスしておけば良かった」

 小さな声で隼人さんが独り言のように呟いた。

「え?」
「……何でもない。さあ、ルームサービスを選ぼう」

 隼人さんにメニューを渡されて、慌てて文字を読むがさきほどの余韻が残り、食欲は完全に消えている。
 まさか隼人さんもキスしたいと思ってくれたのだろうか?
 淡い期待が胸をかすめるが、慌てて打ち消した。
 いや、そんなことある訳ない。私たちはあくまで三ヶ月限定の契約恋人なんだから。今のは少しそういう空気に隼人さんも飲みこまれそうになっただけよ。
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