クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
 それから一時間、隼人さんのことをのらりくらりと交わしながら、今岡キャプテンたちとお酒を楽しみ、帰りはなぜかタクシーに乗せられていた。

「南雲さん、お家この辺ですよね?」
 後部座席の隣に座るのは水沢さんだった。
「はい。マンションの奥の、築30年のアパートですが、部屋はわりと綺麗なんですよ。あ、水沢さん、寄ります?」
 普段よりも上機嫌になった私は、送って頂いたお礼にお茶でも飲んで行ってもらおうと思った。
 丁度妹からお茶のセットが送られて来た所だった。
「いいんですか?」
「別にいいですよ。何もない所ですが。あ、でも、水沢さん、明日お仕事ですよね。早く帰らなきゃですよね」
「明日は夜勤なので、早く帰らなくても大丈夫です」
「そうなんですか。じゃあ寄りますか?」
 そんな話をしていたら、タクシーがアパートの前に到着する。そして見慣れないセダン型の高級車が脇に停まっていた。誰の車だろうと思いながら、料金を払おうとしたら、水沢さんがスマホを取り出してサッと払った。
「私が払いますよ。こんな所に住んでますが、タクシー代くらい払えますよ」
「もちろん南雲さんに経済力があるのは知っていますよ。五年間、家出したお父様の代わりに家族を支えて来られてスゴイと思います」
 水沢さんに家族のことを言われて大きく瞬きをする。
「え、水沢さん、なんで我が家の事情を知っているんですか?」
「さきほど、お店で南雲さんに教えてもらいましたから」
「そうでしたっけ」
 ハハッと笑いながら記憶をたどるがあまり覚えていない。今夜はちょっと飲み過ぎたようだ。
 水沢さんとタクシーを降りてアパートの階段まで歩く。
「あ、部屋は二階です」

 階段を上ろうとしたら、後ろから「おい」という不愉快そうな男性の声が響いた。
 振り向くと、ワイシャツに黒のスラックス姿の隼人さんだった。
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