クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「……隼人さん、なんで?」
「お前が一方的に電話を切るからだろうが。それよりこれはどういう状況だ?」
 隼人さんが私と水沢さんを見た。
「えーと、居酒屋から帰って来た所で、水沢さんに送ってもらって、お茶でも飲んで行ってもらおうかと」

 私の言葉を聞いた瞬間、隼人さんの顔から完全に表情が消えた。
 大股で私に近づき、私と水沢さんの間に割り込むようにして隼人さんが立った。

「水沢、瑞希が世話になったが、送迎はここまでにしてもらおうか。恋人がいる女性の部屋に上がり込むほど、非常識ではないだろう?」

 隼人さんが水沢さんを睨みつける。水沢さんも、普段の温厚な態度からは想像できないほど険しい表情で隼人さんを見返した。もしかして二人はあまり仲が良くないのだろうか?

「……本物の恋人なんですかね?」
 水沢さんの低い声が響く。
「なんだと」
「いえ、お二人がそのように見えないので」

 水沢さんがそう言った瞬間だった。隼人さんが私の方を向き、大きな両手が私の顔を容赦なく包み込み、強引に顎を上に向かせる。そして隼人さんの柔らかな唇が私の唇を完全に塞いだ。

「んん……!」
 驚いて身体を離そうとするが、腰を強い力で引き寄せられ、逃げられない。
 水沢さんが目の前で見ているというのに、隼人さんの唇は深く私の口内を蹂躙していく。お酒の熱さとは違う熱量が隼人さんから流れ込んできて、頭の芯がジンと痺れた。あまりにも濃厚で甘いキスに、足腰から完全に力が抜けていく。

「これで、恋人に見えるか?」

 一分近くにもおよぶ深いキスの後、ようやく解放された。
 隼人さんは親指で自分の唇を拭いながら、水沢さんに冷ややかな視線を向けた。

「……そうですね。今夜は帰ります。南雲さん、おやすみなさい」

 水沢さんはそれだけ言うと、背を向けて立ち去った。
 私は強烈なキスの余韻で頭がふわふわとし、その場で崩れそうになる。
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