クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
「おい、大丈夫か?」
 倒れたかけた私の体を、隼人さんが素早く支える。
「……大丈夫かじゃないですよ。水沢さんの前でなんで……」
 思い出すだけで顔から火が出そうだ。次に会った時にどんな顔をすればいいのか。
「疑惑を晴らす為だ。適度なスキンシップは許されているだろ」
「そ、そうですけど……」
 身も心もとろけるようなキスをされて、心臓がバクバクしている。あんな深く貪られるようなキスをされたのは初めてだ。
「ごちゃごちゃ言ってないで。行くぞ」
「えっ、わっ!」
 いきなり視界が浮き上がる。私は隼人さんの両腕の中にすっぽりと収められていた。まさかのお姫様抱っこに、鼓動がさらに跳ね上がる。
「え、ちょっと、下ろして下さい」
「足をバタバタさせるな。落ちるぞ。大人しく俺の首を掴んでろ」
 落ちるのは嫌だったので、慌てて隼人さんの首にしがみついた。ほのかにコロンの香りが鼻腔をかすめた。
「いい子だ。奥の部屋か?」
 階段を上り切った所で聞かれた。
「はい。一番奥です」
 隼人さんが私の部屋の前で下ろしてくれた。それから鍵を開けて、部屋に入ると当然のように隼人さんも入ってくる。
「狭いな」
 六畳の私の部屋を見て隼人さんが言った。
「隼人さんのようなセレブとは違いますから」
「部屋は一つだけか?」
「そうですけど」
「どこで寝てるんだ? ベッドがない」
「布団を敷いて寝るんです」
「……布団か」
 そう呟くと隼人さんが私のお気に入りの一人用のビーズクッションに目を留め、腰を下ろした。
「おっ、これは気持ちいいな。身体が沈む」
 長い手足を投げ出し、だらりとクッションの上で横になる隼人さんが、妙に無防備でドギマギしてしまう。
「そうですか。こんなものしかありませんがどうぞ」
 隼人さんに冷蔵庫から取り出したお茶のペットボトルを差し出そうとしたら、強い力で腕を掴まれる。
「え、ちょっと」
 勢いよく引っ張られ、ビーズクッションに横たわる隼人さんの胸の上へと、倒れ込んだ。
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