クールな機長は契約恋人の副操縦士を離さない
***
羽田から日本時間の午前十時二十分に出発し、パリのシャルルドゴール空港に到着したのは現地時間で午後六時だった。フライト時間は14時間40分になる長旅だ。
ステイ先のホテルはパリ中心部にあり、バスで移動した。
夕食はホテル内のレストランで済ませ、客室に戻ろうとした時、同じフライトだったCAの仲村なぎさに声をかけられた。
「高月キャプテン、南雲瑞希のことでお聞きしたいことがあるのですが、バーで少し話せますか?」
瑞希の名前を出され、断れなかった。
中村とレストランの隣にあるシックなバーに入り、カウンター席に座った。彼女はピーチフィズを飲み、俺はジントニックにした。
「お疲れの所、お時間ありがとうございます」
右隣に座った彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、大丈夫だ。それに君も疲れているだろう? 十五時間近くのフライトだったんだから」
「いえいえ。高月キャプテンに比べれば大して疲れていませんから。それで、単刀直入にお聞きしますが、瑞希と本当につき合っているんですか?」
「ああ。交際している」
「あの、広報の白鳥さんは高月キャプテンと交際していると言っているのですが?」
彼女の表情が険しくなる。
俺を二股男だと思っているに違いない。
「白鳥綾音と交際したことは一度もない。彼女が勝手に言ってるだけだ」
俺は真っすぐに中村を見ながら答えた。
「瑞希のこと、ちゃんと好きなんですよね?」
「もちろん。彼女とは真剣な交際だ」
中村がほっとしたような表情を浮かべた。
「キャプテンの言葉を聞いて安心しました。でもちゃんと瑞希を守って下さいよ。瑞希が略奪女みたいな言われ方をされていて、私悔しいんですから」
「略奪女? 瑞希はそんな風に言われているのか?」
「白鳥綾音の周辺がそう言っているんです。彼女、すっかり被害者面していますよ。なんで白鳥綾音はそんなこと言うんですか?」
俺はグラスをカウンターに置いた。
瑞希から中村とは親しい間柄だと聞いていたので、事情を打ち明けてもいいと思った。
「白鳥副社長と俺の親父が会社の為に綾音と俺を結婚させたがっているんだ。いわゆる政略結婚だ」
「俺の親父……まさか高月社長?」
「そうだ」
中村が大きく目を見開く。
「えっ、高月キャプテン、社長のご子息だったんですか?」
彼女が驚くのも無理はない。一般社員には親父のことは知らせていない。
頷くと、中村は大きな目を瞬きさせた。
「そうか。それで白鳥さんはキャプテンにこだわっているんですね。彼女プライドが高いから将来の社長夫人の座が欲しいのかも」
中村が納得したようにふむふむと頷く。
社長という言葉に重圧を感じる。そろそろ俺はパイロットを続けるか、経営の方に移るか決めなければならない。常務だった兄が生きていれば、生涯一パイロットでいられたのだが。
短く息をつき、グラスに口をつけると、「もう一つ聞いてもいいですか?」と聞かれた。
羽田から日本時間の午前十時二十分に出発し、パリのシャルルドゴール空港に到着したのは現地時間で午後六時だった。フライト時間は14時間40分になる長旅だ。
ステイ先のホテルはパリ中心部にあり、バスで移動した。
夕食はホテル内のレストランで済ませ、客室に戻ろうとした時、同じフライトだったCAの仲村なぎさに声をかけられた。
「高月キャプテン、南雲瑞希のことでお聞きしたいことがあるのですが、バーで少し話せますか?」
瑞希の名前を出され、断れなかった。
中村とレストランの隣にあるシックなバーに入り、カウンター席に座った。彼女はピーチフィズを飲み、俺はジントニックにした。
「お疲れの所、お時間ありがとうございます」
右隣に座った彼女は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、大丈夫だ。それに君も疲れているだろう? 十五時間近くのフライトだったんだから」
「いえいえ。高月キャプテンに比べれば大して疲れていませんから。それで、単刀直入にお聞きしますが、瑞希と本当につき合っているんですか?」
「ああ。交際している」
「あの、広報の白鳥さんは高月キャプテンと交際していると言っているのですが?」
彼女の表情が険しくなる。
俺を二股男だと思っているに違いない。
「白鳥綾音と交際したことは一度もない。彼女が勝手に言ってるだけだ」
俺は真っすぐに中村を見ながら答えた。
「瑞希のこと、ちゃんと好きなんですよね?」
「もちろん。彼女とは真剣な交際だ」
中村がほっとしたような表情を浮かべた。
「キャプテンの言葉を聞いて安心しました。でもちゃんと瑞希を守って下さいよ。瑞希が略奪女みたいな言われ方をされていて、私悔しいんですから」
「略奪女? 瑞希はそんな風に言われているのか?」
「白鳥綾音の周辺がそう言っているんです。彼女、すっかり被害者面していますよ。なんで白鳥綾音はそんなこと言うんですか?」
俺はグラスをカウンターに置いた。
瑞希から中村とは親しい間柄だと聞いていたので、事情を打ち明けてもいいと思った。
「白鳥副社長と俺の親父が会社の為に綾音と俺を結婚させたがっているんだ。いわゆる政略結婚だ」
「俺の親父……まさか高月社長?」
「そうだ」
中村が大きく目を見開く。
「えっ、高月キャプテン、社長のご子息だったんですか?」
彼女が驚くのも無理はない。一般社員には親父のことは知らせていない。
頷くと、中村は大きな目を瞬きさせた。
「そうか。それで白鳥さんはキャプテンにこだわっているんですね。彼女プライドが高いから将来の社長夫人の座が欲しいのかも」
中村が納得したようにふむふむと頷く。
社長という言葉に重圧を感じる。そろそろ俺はパイロットを続けるか、経営の方に移るか決めなければならない。常務だった兄が生きていれば、生涯一パイロットでいられたのだが。
短く息をつき、グラスに口をつけると、「もう一つ聞いてもいいですか?」と聞かれた。