僕の秘密と、彼女の嘘
「あ、ごめん! びっくりさせちゃったよね」

女同士でも、急に触るのはよくない。
そう反省して、慌てて手を引っ込める。

「ち、ちがうの! 急に触れられてドキッとしただけ!」

そう言って、七瀬は少しうつむいた。

――なにそれ。
かわいいんだけど。

こんな顔もするんだ……と、妙なところで感心していると、七瀬が勢いよく顔を上げた。

……怒ってる?

「今の! 他の女の子にしちゃダメだからね!」

……どういう理屈だよ。

「しないよ」

「あ、男にもダメ!」

「するわけないだろ」

「……ほんとに?」

「ほんとに」

そう返事をすると、七瀬は満足そうにうなずいた。
そのとき、少し尖らせた唇が目に入る。

……やっぱり、かわいい。

「ねえ、響はピアスあけないの?」

「興味はあるけど怖いんだ。痛いんでしょ?」

「最初だけだよ」

七瀬はくすっと笑った。
さっきまでの空気が嘘みたいに、いつもの七瀬に戻っている。

「じゃあイヤーカフは? 意外とゴツめなの、似合いそうだよ! ほら、こういうの」

そう言って、七瀬はスマホの画面をこちらに向けながら、ぐっと距離を詰めてきた。

近すぎる。
髪も、ピアスも、すぐそばで揺れている。

……ドキッとした。

「急に触れられるとドキッとする」って、さっき七瀬は言ってたけど。
それは、こっちだって同じだよ。

……なんて、言えるわけもなく、僕は黙ってスマホを覗き込んだ。
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