僕の秘密と、彼女の嘘
七瀬の手は迷いがなかった。
ロングヘアの経験が皆無な僕は、その鮮やかな手さばきに思わず見とれてしまう。

鏡に映る奏の瞳は、宝石みたいにキラキラしていて、七瀬から一瞬も離れない。

仕上げに、顔周りの髪とお団子の後れ毛を、くるり。

「……はい、完成!」

そこにいたのは――
少し背伸びした、でもちゃんとかわいい小学生。

「わー!! 七瀬ちゃん、すごーい!!」

奏は完全に七瀬の虜だった。

「かわいいねー! 素材がいい!」

そして七瀬も、完全に奏の虜。

「七瀬ちゃん! お化粧もしてほしい!」

「うーん……小学生だからなぁ。ビューラーとグロスだけね。盛りすぎ禁止」

七瀬のメイクは、まるで魔法だった。
一瞬で人を輝かせて、希望と自信をくれる。

――あのときの僕も。
今日の奏も。

「はい、できあがり!」

魔法にかかった奏は、信じられないという顔で鏡を見つめている。

「お姉ちゃん!」

興奮のあまり呼び方が戻っていたけど、今日は目をつむる。

「すごい! モデルさんみたい! 写真撮って!!」

はいはい、撮ります撮ります。

「ありがとう! 七瀬ちゃん!」

こんな顔、いつぶりだろう。
久しぶりに見た、100%の奏の笑顔だった。

その後、奏は僕の伴奏で、七瀬に自慢の歌を披露した。
声はよく伸びて、なにより楽しそうだった。
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