訳あり王子の守護聖女
 もっとも、私も醜い本性を知るまではローザに心酔していたクチなので、騙されている人に対して何も言えない。

 ローザって、巫女より女優のほうが向いてるんじゃないだろうか。

「私の死体が見つからなかったら魔物に食べられたということにするかもしれませんね。もしかしたら、私が崖から落ちたのも魔物のせいにしているかも」
「それ以上言うな。胸が悪くなる」
 本当に嫌そうな顔でそう言って、ルカ様は沈黙した。

「一つ聞きたいんだが」
「なんでしょう?」
 背筋を伸ばし、かしこまって問う。

「お前はエメルナに戻りたいか?」
「いえ、全然。あの国に戻りたいなど、ちっとも思ってません。叶うことならこのまま王宮《ここ》で暮らしたいくらいです。こんな素敵なドレスを着させていただいて――」

 言いながら、自分の格好を見下ろす。
 女官たちに着せてもらったのは春を迎えたいまの時期にぴったりの、胸元に花をあしらった可愛らしいピンク色のドレスだ。

 客人としてもてなされ、ドレスに袖を通すなど、生まれて初めての経験だった。
< 20 / 35 >

この作品をシェア

pagetop