訳あり王子の守護聖女
 両足で階段を踏みしめ、そこでようやく息を吐く。

「大丈夫か?」
 ルカ様の手が腰から離れた。

「はい、ありがとうございます……」
 ドレスの下でまだ心臓が跳ねている。

 ルカ様がいなかったら私は無様に転げ落ち、王宮の笑い物になっていた。

「すみません。裾の長いドレスを着て階段を上ったことなどなくて……」

 ああ、恥ずかしくて目を合わせられない。

 いまルカ様はどんな顔をしているんだろう。
 呆れられていそうで怖い。
 
「気にすることはない。もう少しゆっくり、慎重に進もう。それでも落ちそうになったら俺が支えるから大丈夫だ」

 嘲るでもなく、ルカ様は至極真面目な調子でそう言った。

「え………」
 恐る恐る顔を上げる。

「慣れないドレスと靴で大変だろうが、転ぶことを恐れているならそれは絶対にありえない。俺がいるからな」

 ルカ様は微笑んだ。
 優しい微笑みに胸がギュッとなり、ふと視線に気づいて階段下を見る。

 階段下にいた女官や警備中の騎士は心配そうに私を見上げていた。

 誰一人私の失態を笑ってなんかいない。
 そうか、ここはエメルナとは違うんだ。
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