妹を監禁するはずの悪役から、なぜか溺愛執着されています
 これはあれなのか、神様、創造主様。
 小説のストーリーと彼の運命を大きく変えてしまったから側にいて、一生責任を取れ、ということでしょうか。
 私の手を取ったまま、キラキラと輝く瞳で私を見上げているエディアルド。

「ありがとう、エディアルド」

 褒められ待ちだと察した私が礼を言うと、エディアルドはスッと立ち上がる。

「リゼットのためなら」

 腰を折り、丁寧な礼を取る。
 こんなところで紳士的な態度を取られてもな……。乾いた笑いが出そうだ。

 エディアルドは腕を伸ばし、私をギュッと抱きしめようとしたところで、いきなり頬を両手でつかんだ。
 そして顔を近づけ、ジッとのぞきこむ。

「……血が出ている」

 私の頬をさするエディアルドに、少しヒリッとした。さっき王妃に扇を投げつけられた時にできたキズだ。

「ああ、大丈夫」

 手で隠そうとすると、今度は腕をつかまれた。

「ここも」

 ロープできつく縛られたせいで、手首には赤い跡がくっきりついていた。

「――やはり、ここで始末するか」

 目を細め、すでに気を失っている王妃に、背筋が寒くなるような笑みを向けるエディアルドを必死でなだめた。

「も、もう、止めましょう。帰りたいの」

 エディアルドは私の顔をジッと見つめたのち、指をパチンと鳴らす。周囲の空気が変わったのを肌で感じる。結界を解いたのだろう。

 床に転がっている王妃を一瞥したエディアルドは、吐き捨てた。

「寝て起きたら、すべてが夢だと思うだろうが、そんなわけがない。額の証が現実だと教えてくれるだろう」

 フッと笑う彼は悪い顔をしている。これではどっちが悪役だったのか、わからないぐらいだ。床に倒れる王妃に静かに視線を向ける。

 権力に溺れ、哀れな人……。

 今後、静かな生活を送らねばならぬだろう。エディアルドの眷属に見張られていると意識して過ごさねば、魂を取られてしまう。

 ――俺はいつでも見張っている。

 冷たい視線とエディアルドの放つオーラに、対峙する王妃は命の危険を感じていたはずだ。

 小説の中で、それを経験したのは私だ。

 でも、今はなんて温かい視線を私へと向けるのだろう。胸の奥から嬉しい感情がわきあがる。

 私はエディアルドのことを――。

 ようやく自分の気持ちをはっきりと自覚した。
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