妹を監禁するはずの悪役から、なぜか溺愛執着されています
 そこから婚約式まで、目まぐるしいスピードだった。

 カーライル公爵とエディアルドが三日間開催すると主張した婚約式も、一日でいいと言い張った。その結果、二人が折れてくれたが、あの二人相手に頑張った私を誰かほめて。

「綺麗だ、リゼット」
「ええ、あなたも似合っているわよ」

 エディアルドの胸元を飾るクラバットに輝く宝石と私が着けているイヤリングとブローチもお揃いだ。ついでにドレスの色も深みのあるネイビーで、二人で同じ色合いを着用していた。

「今日も双子コーデだな」
「エディアルドは本当にそれが好きね」

 クスッと笑うとエディアルドはそっと指を伸ばす。

「ああ、あの頃の俺に光を見せてくれたのが、リゼット、君だった。そんな君と同じコーディネートができるなんて、光栄だ」

 エディアルドはそっと私の頬に優しく触れる。手つきはすごく優しくて、愛されていると視線で強く感じる。

「俺はリゼットと出会うまで、毎日意味もなくイライラしていた。だけど、その原因がわからなくて、退屈な毎日を過ごしていた。だけどリゼットと出会って、初めてずっと一緒にいたいと思った」

 エディアルドの端正な顔立ちから、こちらを見つめる穏やかな視線。そこに込められた温もりが、じんわりと胸に広がる。

「やっと、ずっと一緒にいられるんだ。俺が自分で手に入れたんだ」

 ギュッと抱きしめるエディアルドの背中をそっとさする。
 こんなにも、エディアルドの心の中に存在している。そのことが、どうしようもなく嬉しくて、少しだけ泣きそうになる。

「もう、時間よ。行きましょう」

 もう皆が集まっているはずだと、お披露目会が開催される庭園を目指した。

 皆から祝福の声がかかり、エディアルドの手を握り、足を進める。
 口々に祝われ、とても幸福な時間だと思う。
 庭園のガーデニングが美しく、晴れた門出にはちょうどいい。エディアルドは招待客と話し込んでいた。

「おめでとう、エディアルド、リゼット嬢」

 ワイングラスを片手に近づいてきたのはジェラールだった。

「ありがとうございます」
「リゼット嬢、頼んだぞ。エディアルドの手綱を握れるのは、君しかないのだから」
「ええ、そうですわね」

 肝に銘じているわ、それは。

「でも、私が側にいれば大丈夫だと思うので」

 もう腹をくくったわ、その件に関しては。今世はエディアルドと共に過ごすと決めたのだから。

「安心した、俺も肩の荷が下りた」

 ジェラールが笑っていると、肩がポンと叩かれた。

「なにを笑っているんだ」

 エディアルドがジェラールの隣に立つ。昔はジェラールより背が低かったのに、今ではジェラールの背を追い越した。

「いや、エディアルドを頼むとリゼット嬢にお願いしていた」
「なぜ、ジェラールがそんなことを言う。まるでリゼットと親しいみたいじゃないか」

 エディアルドは両手を組み、口を尖らせた。

「そうだ、ジェラール。お前もそろそろ婚約者を決めたらどうだ? いつまで一人でいるつもりだ」
「くっ、この……」

 今までお守り役としてジェラールを散々振り回した自覚があるくせに、エディアルドは意地悪だ。ジェラールも苦笑するしかない。

「ジェラール。――今までご苦労だった」

 ふと、エディアルドが真面目な顔になり、礼を口にした。
 ジェラールは一瞬、目を丸くしたが、次に顔をくしゃりとゆがめた。

「まさかそんなことを言われるなんてな。明日、世界が滅びるんじゃないのか」
「まったく、素直じゃない奴だな」
「それは君にだけは、言われたくない」

 軽口を叩く二人を見ていると思う。彼らには二人の絆があるのだと。ハモンド家はカーライル公爵家に忠誠を誓っているのもあり、ジェラールはずっとエディアルドの側にいた。

 面倒を見ているうちに、本当の兄弟のように思っていたんじゃないかしら。
 これから先、様々な困難が待ち受けていても、エディアルドの側にジェラールがいてくれたら、とても心強い。
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