隣の席の悪魔【旧版】


ショッピングモール。

春休みだからか、
人が多い。

私は雑貨屋へ入った瞬間、
ぱっと目を輝かせた。

「うわ見て空くん!
これ可愛い!!」

カチューシャ。

細い茶色のデザイン。

私は鏡の前で、
それを頭につける。

短くなった髪の毛先が、
またくるんと揺れた。

「どう?」

「……なんか違う」

「えー!?」

私は別のを取る。

「これも可愛い!」

今度は、
幅が太めの黒色。

もう一回つける。

「これは?」

空くん、
数秒じっと見る。

そして。

ぽつり。

「……そっち」

え。

私は思わず鏡を見る。

「今ちゃんと選んだ!?」

「うるさい」

でも。

空くん、
ちょっと目を逸らしてる。

耳。

赤い。

私は思わず笑った。

「買おーっと」



文房具屋。

桜の飾りが施された、
春らしい店内。

私は試し書きコーナーで、
シャーペンを握ったまま唸る。

「うーん……」

「長い」

空くんが、
隣で小さくため息をついた。

「だっていっぱいある!」

「どれでも一緒」

「違うの!」

私は思わず頬を膨らませた。

その時。

空くんが、
あるシャーペンを指差した。

「これ」

え。

私は手に取り。

さらっ。

ノートへ線を引く。

「……書きやすっ!!」

「だろ」

空くん、
ちょっとだけ得意そう。

珍しい。

私は思わず笑った。

「空くん、
これ使ってるの?」

「ん」

私はそのまま、
レジの方向へ足を向けた。

「じゃあこれ買う!」

空くんは、
別に気にした様子もなく歩き出す。

でも。

私は新しいシャーペンを握りながら、
ちょっとだけ嬉しかった。



会計を済ませた私は、
店の外で待つ空くんへ駆け寄った。

「見て〜」

「なに」

私は空くんへ、
シャーペンを掲げる。

「おそろい」

ぴたり。

空くんの動きが止まる。

私のシャーペン。

たぶん、
頭の中で
自分のシャーペンを浮かべてる。

そして。

「……あ」

本気で今気づいたって顔。

私は思わず吹き出した。

「今気づいたの!?」

空くんは、
少しだけ視線を逸らす。

耳。

赤い。

「……別に、
狙ってない」

「へへ」

私は笑いながら、
新しいシャーペンを握りしめた。

その時。

空くんがまた、
やれやれって顔をする。

でも。

そのまま、
小さく笑った。
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