隣の席の悪魔【旧版】
そのあと。
私はゲームセンターの前で、
急に立ち止まった。
「空くん見て!!」
「……なに」
私はケースの中を指差す。
腕時計。
白い文字盤。
細い黒ベルト。
シンプルで、
ちょっと大人っぽいデザイン。
「欲しい……」
「普通に買えよ」
「取る!!
高いもん!」
「無理だろ」
「やってみないと分かんないじゃん!」
◇
数分後。
「なんでぇぇぇ!!」
私は台へ突っ伏した。
取れない。
全然動かない。
「だから無理って言った」
空くん、
後ろで呆れてる。
「もう一回!!」
「沼るぞ」
「うるさい!」
私は再び100円を入れる。
がこん。
動かない。
「っあーーー!!」
その瞬間。
後ろから、
小さくため息。
そして。
「貸せ」
え。
空くんが、
私の横へ立つ。
近い。
私は思わず黙る。
空くんは、
無表情のままレバーを動かす。
がこん。
……動いた!
でも。
落ちない。
空くんの動きが止まる。
数秒の沈黙。
そして。
「……ちっ」
え。
珍しく、
ちょっと悔しそう。
そのまま。
空くんが、
自分の財布から100円を取り出す。
「え、空くん?」
「黙ってろ」
がこん。
今度は、
少しだけ位置をずらす。
数秒。
ぽとっ。
「え!!!」
落ちた。
私は一気に顔を上げる。
「うそ!!」
空くんは、
普通の顔。
でも。
口元が、
ちょっとだけ得意そうだった。
私は思わず吹き出した。
「空くん、
めっちゃ本気じゃん!」
「うるさい」
空くんの耳がまた赤くて、
私はばれないように笑った。
◇
ゲームセンターを出た後も、
私は腕時計の箱を抱えながら、
何回もにやけてしまう。
「やばい……
めっちゃ嬉しい」
「子どもか」
「だって空くんが取ったんだよ!?」
その瞬間。
空くんが、
少しだけ視線を逸らした。
私は腕時計の箱を見つめながら、
ぱっと笑う。
「大切にする!」
私はそのまま、
嬉しくて続ける。
「受験の時も使う!」
すると。
空くんが、
小さくため息をついた。
「……勝手にすれば」
「へへ」
私は笑いながら、
箱をぎゅっと抱きしめた。
その時。
空くんが、
少しだけ目を細める。
今日何度目かの、
やれやれって顔。
でも。
口元は、
いつもより緩んでいた。
私はゲームセンターの前で、
急に立ち止まった。
「空くん見て!!」
「……なに」
私はケースの中を指差す。
腕時計。
白い文字盤。
細い黒ベルト。
シンプルで、
ちょっと大人っぽいデザイン。
「欲しい……」
「普通に買えよ」
「取る!!
高いもん!」
「無理だろ」
「やってみないと分かんないじゃん!」
◇
数分後。
「なんでぇぇぇ!!」
私は台へ突っ伏した。
取れない。
全然動かない。
「だから無理って言った」
空くん、
後ろで呆れてる。
「もう一回!!」
「沼るぞ」
「うるさい!」
私は再び100円を入れる。
がこん。
動かない。
「っあーーー!!」
その瞬間。
後ろから、
小さくため息。
そして。
「貸せ」
え。
空くんが、
私の横へ立つ。
近い。
私は思わず黙る。
空くんは、
無表情のままレバーを動かす。
がこん。
……動いた!
でも。
落ちない。
空くんの動きが止まる。
数秒の沈黙。
そして。
「……ちっ」
え。
珍しく、
ちょっと悔しそう。
そのまま。
空くんが、
自分の財布から100円を取り出す。
「え、空くん?」
「黙ってろ」
がこん。
今度は、
少しだけ位置をずらす。
数秒。
ぽとっ。
「え!!!」
落ちた。
私は一気に顔を上げる。
「うそ!!」
空くんは、
普通の顔。
でも。
口元が、
ちょっとだけ得意そうだった。
私は思わず吹き出した。
「空くん、
めっちゃ本気じゃん!」
「うるさい」
空くんの耳がまた赤くて、
私はばれないように笑った。
◇
ゲームセンターを出た後も、
私は腕時計の箱を抱えながら、
何回もにやけてしまう。
「やばい……
めっちゃ嬉しい」
「子どもか」
「だって空くんが取ったんだよ!?」
その瞬間。
空くんが、
少しだけ視線を逸らした。
私は腕時計の箱を見つめながら、
ぱっと笑う。
「大切にする!」
私はそのまま、
嬉しくて続ける。
「受験の時も使う!」
すると。
空くんが、
小さくため息をついた。
「……勝手にすれば」
「へへ」
私は笑いながら、
箱をぎゅっと抱きしめた。
その時。
空くんが、
少しだけ目を細める。
今日何度目かの、
やれやれって顔。
でも。
口元は、
いつもより緩んでいた。