隣の席の悪魔【旧版】


「……星野」

低い声。

顔を上げる。

空くん。

目の前にしゃがみ込んでる。

その顔を見るのが、
少しだけ怖かった。

「立てる?」

私は俯いたまま、
小さく首を振る。

すると。

空くんが、
小さくため息をついた。

「……ほら」

腕を引かれる。

私はそのまま、
近くのベンチへ座らされた。

「……浴衣、
汚れた」

ぽつり。

言った瞬間。

なんか。

急に悲しくなった。

「私、
帰る」

花火。

見たかった。

でも。

膝も痛いし。

下駄も擦れてるし。

浴衣も汚れたし。

ヨーヨーも、
割れちゃった。

その時。

空くんが、
少しだけ眉を寄せた。

でも。

何も言わないまま立ち上がる。

「え」

「ここいろ」

短い声。

「絶対動くな」

そのまま。

空くんは人混みの中へ走っていった。
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