隣の席の悪魔【旧版】
私は笑いながら、
机の上の教科書をカバンへ詰め込む。

「努力型」

ぽつり。

続けて言った。

「空くんって、
すごいよね」

「……何が」

「努力できるの」

ノートをしまう空くんの手が、
ぴたりと止まる。

「だってさ、
頭いい人って、
最初から頭の作りが違うものだと思ってた」

私は笑う。

「でも空くん、
ちゃんと頑張ってるんだなーって思って」

空くんは少しだけ目を伏せて、
カバンを持ち上げた。

「……帰る」

え。

「ま、待って待って!!
怒った!?」

教室のドアへ向かいながら、
空くんが小さく言う。

「……別に」

私は急いでカバンを掴み、
空くんの後を追いかけた。

その時。

「あ、そうだ」

「うわっ」

ぴたりと立ち止まった空くんの背中に、
私は今日だけで二回もぶつかった。

振り返った空くんは、
私に何やらくしゃくしゃの紙を手渡す。

そこには。

ありんこ。

「なんでこれ……」

言いかけたところで、
紙の端っこに気づいた。

小さな文字。

『似てない』

「ふはっ……!」

思わず笑ってしまう。

なにこれ。

変なの。

冷たいくせに。

ちゃんと返してくれるんだ。

しかも。

字、
ちっちゃ。

なんなの、
この人。

そそくさと歩き始めた
空くんの背中に、
私は慌てて叫んだ。

「空くーーーーん!!!」

夕方の廊下に、
声が響く。

振り返る、
小さな背中。

「また明日!!!」

空くんは、
少しだけ立ち止まって。

また前を向く。

「……うるさい」

でも。

その声は。

少しだけ、
笑ってる気がした。
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