隣の席の悪魔【旧版】


図書室。

西日。

静かな空気。

空くんはその日も、
いつもの窓際にいた。

参考書を開いたまま、
何かを書き込んでる。

「空くん」

「なに」

「推薦どうだった?」

空くんの手が、
ぴたりと止まる。

私は思わず姿勢を正した。

昨日は。

空くんの推薦試験の日だった。

空くんは少しだけ前を向いたまま、
ぽつり。

「……まぁ」

「まぁ?」

「たぶん大丈夫」

その言い方。

いつも通り。

でも。

なんか、
少しだけ疲れて見えた。

私は小さく笑う。

「そっか」

そして。

ぽつり。

「頑張ったね」

その瞬間。

空くんが、
少しだけこっちを見る。

珍しく、
少しだけ目が丸い。

「……なに」

「え?」

「急に」

私は思わず笑った。

「だって頑張ってたじゃん」

夏からずっと。

図書室で。

ずっと。

私は知ってる。

空くんが、
ちゃんと努力する人だって。

その時。

空くんが、
視線を逸らしながら
小さく笑った。
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