隣の席の悪魔【旧版】

秒針

二月下旬。

少しだけ、
空気が春っぽくなっていた。

でも。

私は全然落ち着かなかった。

「むり……」

机に突っ伏す。

教科書。

参考書。

問題集。

見るだけで眠い。

「あと少しだろ」

隣。

空くん。

推薦で合格が決まってからも、
放課後になると普通に図書室へ来ていた。

「空くんは終わったから余裕じゃん……」

「余裕ではない」

「絶対余裕」

私はシャーペンを転がしながら、
むすっと頬を膨らませる。

窓の外は、
夕焼け。

静かな図書室。

私はシャーペンを止めて、
ぼんやり左手の腕時計を見た。

去年の春休み、
空くんが取ってくれた腕時計。

「……空くん」

「なに」

「向こう行ったらさ」

言いかけて、
止まる。

無理。

聞けない。

“私のこと、
忘れない?”

そんなの。

聞けるわけない。

私は慌てて問題集を開く。

「……なんでもない」

空くんは、
何も言わなかった。

ただ。

黙ったまま、
こっちを見ていた。
< 132 / 150 >

この作品をシェア

pagetop