隣の席の悪魔【旧版】


帰り道。

夜。

少し冷たい風。

私は空を見上げながら歩く。

「受験やだぁ……」

「今さら」

「逃げたい」

「逃げるな」

「だって!」

すると。

空くんが、
少しだけ前を向いたまま言った。

「……星野」

「ん?」

「落ちる気しない」

え。

私は思わず空くんを見る。

空くんは、
まっすぐ前を見ていた。

「なんで?」

「走ってたし」

「え?」

空くんが、
少しだけ笑って、
私を見る。

「体力あるから」

「受験関係ある?」

私は思わず吹き出した。

その時。

空くんが、
ぽつり。

「……でも」

「え?」

「ちゃんと頑張ってたし」

心臓。

どくん。

風。

白い息。

静かな夜道。

「途中で投げないって、
分かる」

私はうまく返事ができなくて、
小さく俯いた。

「……ありがと」

「……まぁ、
計算は苦手だけどな」

「ねえってばー!」

私は思わず空くんを軽く叩く。

すると。

空くんが、
少しだけ笑った。

気づいたら。

さっきまでの不安を、
少し忘れて笑っていた。
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