隣の席の悪魔【旧版】


図書室。

静かな空気。

窓から差し込む、
夕方の光。

ページをめくる音だけが、
小さく響いている。

空くんは、
慣れた手つきで本の返却手続きを済ませた。

「空くんって、
図書室よく来るの?」

「たまに」

絶対嘘。

慣れてるもん。

私は本棚の間を歩きながら、
背表紙を眺めた。

その時。

ふわっと風が吹く。

「……あ」

甘い匂い。

私は思わず窓の外を見る。

夕焼け。

揺れる木。

そして。

「金木犀」

私は瞬きをした。

「空くん、
分かるんだ」

「……有名だろ」

「えー、
なんか意外」

「だから失礼」

私は思わず笑った。

窓から入る風。

オレンジ色の光。

金木犀の匂い。

静かな図書室。

ページをめくる音。

隣には、
空くん。

この場所だけ。

時間が少し、
ゆっくり流れてるみたいだった。
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