隣の席の悪魔【旧版】
気を取り直して、
もう一度大きく口を開けた時。

「……一口ちょうだい」

「え?」

目を丸くする私を見て、
空くんは少しだけ視線を逸らした。

「食うの遅いし」

……え。

私は思わず、
手の中の肉まんを見る。

これ。

私、
もう食べた。

……え。

それって。

「……なに」

空くんが、
少しだけ眉を寄せる。

私は慌てて顔を上げた。

「い、いやっ、
別に!!」

声、
裏返った。

次の瞬間。

空くんが。

私の手首ごと、
肉まんをぐいっと自分の方へ寄せた。

私は思わず、
息を止める。

空くんは平然とした顔のまま、
一口かじった。

「……っ」

コンビニの明かり。

白い湯気。

冬の空気。

……無理。

心臓、
うるさい。

空くんは何事もなかったみたいに、
もぐもぐしながら言う。

「……あつ」

「そりゃそうでしょ!!」

……私だけ。

私だけ、
顔が熱い。
< 41 / 150 >

この作品をシェア

pagetop