隣の席の悪魔【旧版】


「っ、空くん!!」

聞き慣れた声。

振り向く。

人混みの向こう。

いた。

「……星野」

その瞬間。

肩の力が、
少し抜けた。

「ご、ごめん!!
迷った!!」

息切れてる。

顔真っ赤。

世話が焼ける。

「……だから言った」

「だって人多いし!!」

「言い訳」

星野はむっと頬を膨らませる。

その時。

星野の隣に立っていた男子が、
苦笑いしながら言った。

「星野さん、
めっちゃ焦ってたよ」

「ち、違うし!!」

「いや、
普通にオロオロしてたじゃん」

「言わないでよー!」

星野が、
男子の肩を叩く。

その様子を見ながら。

『裏でモテるタイプ』

葛西の言葉が、
やけに頭をちらついた。

「でも、
ありがと!
ほんと助かった!」

星野が笑うと、
そいつは手を振りながら走っていった。

星野が、
ちらっと俺を見る。

舌を出して笑ってる。

反省してる顔じゃない。

「……ほんとばか」

呟いて、
歩き出す。

「ごめんなさいってばー」

その時。

俺はぽつりと言った。

「……仲良くなりすぎ」

「え?」

「この短時間で」

俺は前を向いたまま、
小さく言う。

「何?
なんのこと?」

「さっきのやつ」

「え」

「どんなコミュ力してんだよ」

星野は、
不思議そうに首を傾げた。
< 51 / 150 >

この作品をシェア

pagetop