敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
彼女の話す内容があまりにも自分に重なっていて、久登は胸を締めつけられた。
花梨の性格を思えば、もし妊娠が分かったとしても、久登を取り巻く環境を考え、すべてを一人で背負って静かに身を引いてしまいそうだ。彼女はそれほどまでに控えめな性格で、人を思いやる人間なのだから。
「ありがとう、佐倉さん。よく、彼女のことが分かった」
「そうですか、ならよかったですけど……」
珍しく困惑する久登をじっと見つめていた璃子は、ふいに何かに気づいたように目を見開いた。
「もしかして、須天さん。あなた……」
「ああ……俺と花梨は四年前に深い仲になったことがある。須天コーポレーションの跡取り息子として生きていた時にだ」
璃子は久登の言葉に返す言葉がないようで、じっとその場で固まっていた。
久登は璃子を見つめていたが、その場にはいない花梨に想いを馳せた。
(日本に戻ったら、必ず彼女に会いに行く)
ひとりでここまで苦労して子供を育て、今更、自分の顔をなんて見たくない気持ちもわかる。
だが、直接話してみないと納得できない、確かめたいことばかりだ。
久登は、一度でも花梨にひどい仕打ちをしようと思ったことはないし、むしろその逆で恋人でも友人でも、彼女が望む形で大切に関係を育んでいきたいと思っていた。
今からでも間に合うのなら、全力で彼女の力になりたい。
もし――自身の家柄のことで思い悩ませてしまったのなら、謝りたい。
そして子供たちと血が繋がっているのなら、一生をかけて父親として生きていきたい。花梨とともに。
それほどまでに、久登への花梨への愛情は深い。
(花梨を愛してるんだ。四年前から気持ちは変わらない……)
久登は璃子と解散したあと、ステイ先のホテルにチェックインし、スーツケースを適当に部屋の隅へ置いた。
カーテンを開け、窓の前に立つ。
眼下には、シドニーの街がゆっくりと夕暮れに沈んでいく光景が広がっていた。
低く傾いた太陽がビル群のガラスに反射し、港の水面はオレンジと紫を溶かしたような色を帯びている。
行き交う船の白い航跡が、静かな時間の流れを際立たせていた。
「……この景色が見られているのは、花梨のおかげだ」