敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
再会したことへの緊張なのか、それとも――理由を考える前に、心臓が嫌なほど早鐘を打ち始める。かっこいいだとか、綺麗だなんて思ってはいけないと分かっているのに、彼の姿からどうしても視線を外せなかった。
「君は昔、西麻布のビストロに勤めていた〝花梨〟で、間違いないか?」
一瞬、人違いだと言い逃れをする考えも浮かんだが、ここまで把握されている以上、無駄な抵抗だとすぐに悟る。
小さく息を吸い、花梨は決心して頷いた。
「ええ。あの花梨で、間違いありません。ということは、あなたはあの時の久登さんなんですね?」
久登も花梨の質問に、小さく頷いた。
「ああ、間違いない。あのとき、君が作ってくれたスープの味を、今でも覚えてる」
ふたりにしか分からない記憶を口にされ、花梨の胸の奥がじんと熱くなった。
懐かしさが不意に込み上げ、目の奥が熱を帯びる。
それほどまでに、自分は彼を忘れられていなかったのだと、否応なく思い知らされる。
もう互いにまったく別の人生を歩いているはずなのに、ほんの一瞬だけ、あの頃の自分たちに戻ったような錯覚に陥り、胸が締め付けられた。
そんな彼女から、久登は視線を逸らさない。
落ち着いた眼差しの奥に、わずかな熱が宿っている。
「この四年間、君を忘れた日はなかった。それくらい、君の存在は、俺にとって大きかった」
「そんな……嘘でしょう……?」
自虐めいた言葉が、震える声と一緒に零れ落ちる。
脳裏には、須天と婚約者の乃愛が自分の前に現れたときの光景が、鮮明によみがえっていた。彼には婚約者がいて、結婚の話も進んでいるはずだった。
「……私のこと、ただの遊びだったけど、惜しかったって。そうはっきり言ってくれたほうが、まだマシです。あなたは、私のこと本気じゃなかった」
久登の花梨を見つめる瞳が細められ、大きく揺れた。
彼もまた信じられないようなものを見るような目で笑う。
「……それ、本気で言ってるのか?」
低く、抑えた声がずしんと胸に沈む。
(傷つけた)
そう反射的に感じた、直後だった。
久登が一歩、距離を詰める。花梨が背後に壁の気配を感じた瞬間、彼の腕が横に伸び、彼女の逃げ道を塞ぐように壁に手をついた。
「君のことは、本気だった」
息を詰める花梨へ、久登は熱い眼差しを送る。
「だからずっと、連絡を待ち続けていたんだ」
「……っ、でも!」