敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
頭が追いつかない。それでも、彼の目が逸れないことだけは、はっきりと分かる。

「俺は、本気で君との未来を考えていた。だから、君が目の前からいなくなったとき、自分を抑えることができなくなったんだ」
久登は一歩も引かず、花梨を見つめていた。

「親の言いなりで生きていく人生に戻る気力なんて、あのときの俺には、もう残っていなかった」
胸に彼の言葉が染み入って、体中がじんわりと熱を帯びる。

「花梨に夢を話したときだ。あのとき、やっぱり俺は空に戻りたいって、強く思った」

そう言って、久登はかすかに口元を緩めた。

「君が……空が似合うって、言ってくれただろう?」

花梨は、ゆっくりと頷く。
頭はまだ追いつかない。それでも、彼の言葉が嘘ではないことだけは、痛いほど伝わってくる。もし、これが本当なら、身を引く必要なんて、なかったのだろうか。
久登はまっすぐこちらを見ている。もう何も、隠し事はないのだと告げるような、強い眼差しだった。

「俺は、今でも君のことを深く想っている。もう一度、俺との未来を考えてはくれないか」
「……っ、久登さん……」

花梨は言葉を失い、ただ彼を見つめ返すことしかできない。
心はぐらぐらと激しく揺れていた。
彼への気持ちが溢れ出しそうだ。それにこれ以上にないくらい、頭も混乱している。
このまま久登の胸に飛び込んでしまいたい。けれど、母親としての自分が、寸でのところでブレーキをかけた。
すると久登は、そんな花梨を見透かしたように、さらに強い眼差しを向ける。

「君に、子供がいると聞いた」

その言葉に、どくんっと大きく心臓が跳ね上がった。

「佐倉さんと、少しだけ話した。三歳の双子の男の子を、ひとりで育てていると……その話は、間違いないか?」
「璃子が……」
< 45 / 88 >

この作品をシェア

pagetop