敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
彼女の名前を聞いた瞬間、なぜ久登が自分の居場所を知っているのか、腑に落ちた。
勘のいい彼女のことだ。もしかしたら、自分と久登との関係にも、もう気づいているのかもしれない。
「君が、まだ俺に隠していることはないか?」
久登は動揺する花梨に、畳みかけるように質問する。
花梨は、久登に何も伝えずに消えた。父親が危篤状態であったことも、実家に多額の借金があったことも、そしてふたりの間にできた子供のことも。それらは、彼にとってただの重荷になるとしか、思えなかったからだ。
すると久登は一拍置き、低くまっすぐな声で尋ねる。
「時期的にも……俺との子供じゃないのか? 本当のことを知りたい、花梨」
固まる花梨に、久登は畳みかけるように告げる。
「俺は、今でも君を愛している。君との子供だとしたら、これ以上も幸せはない。それに……たとえ、別の男の子供だったとしても俺は君の血が通った子供なら、一生をかけて愛すことができると断言できるよ」
視線を逸らさず、言い切った久登の目は本気だった。
その熱量に、花梨の耐えていた涙が一滴、頬を伝った。
(本当に? 久登さん……)
久登は涙を流す花梨を、瞬きもせず見つめていた。
久登の優しさが胸を打ち、花梨は耐えきれず顔を覆った。
もちろん、自分の愛する子供たちが生きる希望であったし、精神的な支えでもあった。
だがふたりの未来を守るのは自分の背中にかかっており、険しい道のりを覚悟していた。
大翔と大輝が元気で傍にいてくれる――だから幸せだとはっきり言えるが、それでも心細くなるときがあった。
ひとりで、見えない未来と戦っている不安が襲ってくる夜があったのも、事実なのだ。
だが今、目の前の久登の存在が、そっと自分の孤独を包んでくれている気がしてならない。
「久登さん、ごめんなさい。私は……あなたのことが好きでしたが、当時、伝えられないことが沢山あって……」
花梨は、少しずつ、久登に当時自分の身に起きていたことを語った。
父の病気、多額の借金、祖母の介護。
それらが重なり、夢を手放さざるを得なかったことも。
「……唯一、私を認めてくれたあなたが、交際を申し込んでくれたとき、本当にうれしかったんです」