敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~

花梨は少し不安に思いながらも、子どもたちの背中をそっと押して、シミュレーターの列へと並ばせた。
やがて、係員に誘導され花梨たちの順番が回ってきた。
花梨は一度もこの手の操縦体験をしたことがなく、上手くサポートできるか、少し緊張してしまう。

「さあ、まずは大輝。操縦席に座ってみようか」

璃子に促され、大輝がコックピットに模した部屋に入り、モニターの前の椅子に座る。
操縦席は想像以上に複雑で、計器類がびっしりと並んでいた。

「えっと、これで合ってるかなぁ……」
花梨は説明を聞きながら操作してみるが、思ったより難しい。
どこを触ればいいのか分からず、飛行機は上手く滑走路から空へ飛び立たない。大輝はもどかしさから、その場で地団太を踏み始めた。

「むずかしいね……」
「ひこーき、とばないじゃあん……!」

璃子の腕に抱かれていた大翔もしゅんとしたのが見え、花梨の焦りがピークに達したそのとき。

「ここは、こうだよ」

低く、落ち着いた声が背後から届いた。
振り返るより先に、周囲がざわりと揺れる。
ざわめきは一瞬で大きくなり、あちこちから小さな悲鳴のような声が上がった。
花梨の視界に映ったのは――。

「久登さん!」

スターロード航空の制服に身を包んだパイロット姿の久登が、そこに立っていた。

「遅くなってごめん。間に合ってよかった」

柔らかく微笑むその姿に、周囲の母親たちから黄色い声が上がる。

「え、パイロットさん⁉」
「本物じゃない?」
「すごいかっこいい……!」

空気が一気に華やぐ。久登は周囲に軽く会釈をすると、自然な動作で操縦席に腰を下ろす。
そして、戸惑う大輝をそっと抱き上げ、自分の膝の上に乗せた。

「大輝。一緒にやってみようか。怖くないよ」
「……ほんと?」
「もちろん」

久登の手が重なり、器用に計器を操作する。
するとすぐに画面の中で、滑走路がゆっくりと流れ始めた。

「うわぁ!」
「すごい! ひこーき、うごいた!」

大翔も身を乗り出し、目を輝かせる。

「ぱいろっとしゃん、ほんものだ……!」
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