敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~

双子の羨望と尊敬が混じった眼差しが、真っ直ぐ久登に向けられる。
久登はその視線を受け止めながら、穏やかに頷いた。

「上手だよ。大輝」

操縦が安定すると、久登はふっと花梨のほうを見る。
――お待たせ。
そう告げるように彼の片方の口角をわずかに上げる。

(サプライズ、大成功だね)

胸がいっぱいになり、花梨は思わず満面の笑みを浮かべた。
シミュレーターの中で、飛行機は大空へと滑り出す。
その光景を見つめながら、花梨は思った。

(ようやく、久登さんと子どもたちを、引き合わせてあげられた)

大翔を腕に抱えながら、大輝と笑いあう久登を、花梨は少し離れた場所から幸せな気持ちで眺めていた。
イベントを終えたあと、四人はそのまま展望デッキへと移動する。

「ぱいろっとしゃん、ぶーんちて!」
「ぼくもちてー!」

シミュレーション体験のあと、折り紙で飛行機づくりの工作も一緒にしたせいか、久登と子どもたちの距離は、驚くほど一気に縮まっていた。
翔と大輝は久登の腕に絡みつき、代わる代わる肩車をねだっている。

「ちょっと、だめだよ。パイロットのお兄さん、疲れちゃうでしょ」
「でも、ぱいっろっとしゃん、ちからもちだもん」
「そぉだよっ!」

そう言われて、久登は困ったように笑いながらしゃがみ込み、大翔を肩に担いだ。
花梨の目にはもう、久登は完全に父親の姿に映っていた。

「分かったよ。順番な。大翔は、どこに行きたい?」
「ぼくは、おやまにいきたいです」
「お山ね。よし、じゃあ飛んで行っちゃうぞー!」

久登が走り出すと同時に、大翔が甲高い声を上げた。
それにつられて、大輝も「きゃっ、きゃっ」と笑い出す。
そのときだった。

「ねぇ……ぱいっろっとしゃんは、いつおうちにかえるの? まだあそびたい」

手を繋いでいた大輝が、何気ない調子で花梨を見上げる。
その一言に、胸の奥が強く跳ねた。

(久登さんは、この子たちのお父さんなのに……)
< 56 / 74 >

この作品をシェア

pagetop