敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~

花梨は思わず、その場で足を止める。
ふたりはすっかり久登に懐いていて、久登自身も、見ているだけで分かるほど幸せそうだった。
――今、伝えなきゃ。
そう思った瞬間、展望デッキの端まで走っていた久登が、大翔を肩車したまま戻ってくる。

「じゃあ、次は大輝の番な」
久登は額にうっすら汗を滲ませながら、大翔をそっと下ろした。
その無防備な笑顔を見た瞬間、花梨の覚悟は決まった。
花梨は胸の奥の震えを押し込めるように、深く息を吸って気合を入れる。

「あのね……大翔と大輝に、大事なお話があるの」
「「ふぇ……?」」

双子が同時に、きょとんとした表情でこちらを見る。
登もまた、何かを察したように動きを止め、花梨に視線を向けた。
花梨は久登を一度だけ見てから、もう一度、子どもたちの前にしゃがみ込む。
指先が、かすかに震えているのが自分でも分かった。

「今日いっぱい遊んでくれたパイロットさんね……」

言葉を選びながら、ゆっくりと続ける。

「この人は、ふたりの血の繋がったパパなの」

一瞬、風の音だけが耳に残った。
久登は息を詰めたまま、ただ花梨を見つめている。
大翔と大輝は、すぐには言葉を返さなかった。
けれど久登の顔と花梨の顔を、交互に見比べて――。

「……ぱぱ?」
「ほんとに?」

不安と期待が混じった声で、両親に問いかける。
久登はその場に膝をつき、目線をふたりと同じ高さに合わせた。
喉を鳴らし、少しだけ間を置いてから、静かに頷く。

「うん。ずっと会えていなくてごめんな。俺が……ふたりの、パパなんだ」

次の瞬間だった。

「えっ――!」
「やったぁ……! ぱいろっとしゃんが、ぱぱ!」

小さな身体が、一斉に久登へと飛びつく。
ぎゅっと抱きつかれ、久登は思わず目を見開いたあと、堪えきれないようにくしゃっと笑った。

「うん、ふたりに会えて、本当に嬉しいよ」

その声は震えていた。
花梨は、その光景を一歩引いた場所から見つめながら、静かに涙をこぼす。
不安も、恐れも、すべてがほどけていくのを感じていた。

(ちゃんとふたりに、久登さんのことを伝えられてよかった)

空の向こうでは、白い機体がゆっくりと滑走路を進み、やがて大空へと飛び立っていく。
その姿を見上げながら、花梨は静かに幸せを嚙みしめていた。





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