敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~


そう思いながらも、つい目が行ってしまう。
周囲にいる女性たちの視線が、無意識のうちに彼に集まっているのにも嫌でも気づいてしまい、胸の奥が、少しだけざわついた。

その一方で、花梨は自分の水着に視線を落とす。
露出を抑えた、淡い色合いのワンピースタイプを選んだ。胸元は高めで、腰回りも体の線を拾いすぎないデザインだ。
子どもと一緒に入るにも、ちょうどよくて、おしゃれにも見えるはず……。
そう自信を持っていたはずなのに、ふいに不安が襲ってくる。

(ちょっと、肉づきよくなったかな)

双子を産む前の、引き締まっていた自分の身体を思い出し、胸の奥がきゅっと縮む。
久登は、あの頃の自分しか抱いていない。
実際にこれからそういう機会がやってきたとして、幻滅されやしないだろうか――そんな不安が、頭をよぎる。
込み上げる恥ずかしさを紛らわすように、花梨はタオルを肩にかけた。

しばらく遊んだあと、身体を拭いてプールを上がる。そのまま海へ向かって開けた芝生のガーデンへ向かった。
夕方の光を受けた芝生は柔らかく、裸足でも心地いい。久登が一歩、わざと距離を取ると、双子が同時に追いかける。

「まてー!」
「ぱぱ、にげた!」
「あはは、ふたりとも足速いなぁ!」

久登は追いかけ役になり、双子は笑い声をあげて逃げ回る。
その背後には、ゆるやかに波打つ海が広がっていた。
花梨は少し離れたデッキチェアに腰掛け、タオルを肩にかけたまま、その光景を眺めている。

(家族、っていいな)

ひとりで育てていた頃も、十分に楽しかった。
でも、久登がこうして全身で子どもたちに真摯に向き合ってくれている姿を見ると、頼もしくて、心強くて――今まで時折襲ってきていた〝孤独〟を微塵も感じない。
やがて久登と双子が戻ってきた。

「ジュースのむぅ!」
「つめたいの、ほちい!」

双子はストロー付きのオレンジジュースに夢中で、小さな手でカップを抱え、並んでちゅうちゅうと音を立てている。
久登はその隣に腰を下ろし、花梨の方へほんの少し身を寄せた。

「……その水着」
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