敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~


ふたりは同時に、互いのグラスを一瞬だけ重ねた。
喉を潤すアルコールが、すっかり太陽で火照った体に染み渡る。
久登と目が合い、ほぼ同時にふっと表情を緩めた。

「今日は私たち頑張ったね」
「だな」

ふたりは一日中、初めての沖縄旅行ではしゃぐ双子と炎天下の中走り回ったのだ。
いくら体力には自信があるふたりとはいえ、くたくただ。
花梨は今日あった子供たちとの出来事を、久登と共有する。彼もまた、いろんなことを話してくれた。

今まではどんなに大変なことも、どんなに楽しいことも、ひとりで完結させていた花梨は、双子を同じように大切に思う久登と分かち合うことができ、しみじみと幸せを感じていた。
これはひとりで育てているときには、感じられない喜びだった。

(やっぱり、一緒に子供を愛してくれる人がいるって、なんて温かい気持ちになるんだろう)

一通り話し終えふたりの間に沈黙が落ちると、久登はふいに彼女の手を優しく両手で包み込んだ。

「花梨」
「久知さん……?」

久登はいつもより低く、落ち着いた声で彼女を呼ぶ。
ほんの一瞬、言葉を選ぶように視線を伏せる。それから再び、まっすぐ花梨を見つめた。

「……結婚しよう」

彼は迷いなく、はっきりと伝える。
花梨はその突然の言葉に、すぐに返事ができなかった。
嬉しくて胸がいっぱいなのだ。
久登はそんな彼女を見つめながら続ける。

「この先も、四人で暮らしたい。住む場所のことも、ちゃんと考えてる。新しくマンションを買う。立地も、間取りも、君たちが暮らしやすい形にしたい」

淡々とした口調だったが、一つひとつの言葉が、現実を伴っていた。

「仕事のことも、無理しなくていい。続けたいなら、続ければいいし、辞めたいなら、それも選んでいい。……俺は、今までひとりで頑張ってきた花梨の気持ちを優先したいんだ」

花梨は、その言葉を噛みしめるように聞いていた。
彼はいつも、自分の気持ちに耳を傾けてくれる優しさを持っている。それがとても、ありがたかった。
久登は、スラックスのポケットから小さな箱を取り出した。
開かれた箱の中で、大きな一粒のダイヤが、正面の光を反射してきらりと輝く。
花梨は、思わず息をのんだ。

「久登さん、こんな高価なものを……」
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