敏腕パイロットは空の上のシェフを愛す~愛おしい双子を添えて~
言葉少なにオーナーに告げた彼は、表情を変えず遠い場所を見ているようだった。
容姿が美しいのも相まって感情が見えない印象を受ける。須天の社長と同様、周りに緊張感を与える男性だった。
『……それにしても、息子さんを連れてくるなんてびっくりだな。今までこんなことあったか?』
厨房に戻ったオーナーが、ベテランシェフに小声で耳打ちしている。
須天がこの店に通い始めて、もう五年は経つというが、こんなことはこれまで一度もなかったらしい。
(須天、久登……さん)
厨房の奥からそっと覗いた親子の表情は、温かいものとは程遠かった。
心なしか、久登の顔つきが先ほどよりも硬くなっているように見える。
よほど、難しい話をしているのだろうか。
なんとなく、花梨の目には久登が寂しげな横顔をしているように映り、視線を逸らすことができなかった。
生まれてこの方、これほどの大企業の息子として生きてきたのなら、人一倍、気苦労もあったのではないだろうか。
花梨は自分と久登がまったく違う次元にいると分かりながらも、なぜか心を寄せてしまうのだった。
『花梨、ホール出てくれる? 回転、落ち着いたら戻ってきて』
『承知しました』
店が開店ししばらく経ったころ、オーナーにそう言われ、一番下っ端の花梨は先輩の後ろを通りすぎ、厨房を抜ける。
店内はすでに賑わいを見せており、足を止める暇もないほどの忙しさだった。
そんな中、オーダーを取ろうとして、花梨ははっとする。
ペンがない。厨房で一度使う機会があり、その際に落としてしまったようだ。
(どうしよう。取りに帰らないと……)
次々とオーダーする客に断りを入れてその場から立ち去ろうとしたそのとき。
すぐ隣の席に座っていた久登が、何も言わずに胸ポケットから一本取り出し、花梨に向かって差し出した。
『これ、使って』
『え……あ、ありがとうございます……!』
容姿が美しいのも相まって感情が見えない印象を受ける。須天の社長と同様、周りに緊張感を与える男性だった。
『……それにしても、息子さんを連れてくるなんてびっくりだな。今までこんなことあったか?』
厨房に戻ったオーナーが、ベテランシェフに小声で耳打ちしている。
須天がこの店に通い始めて、もう五年は経つというが、こんなことはこれまで一度もなかったらしい。
(須天、久登……さん)
厨房の奥からそっと覗いた親子の表情は、温かいものとは程遠かった。
心なしか、久登の顔つきが先ほどよりも硬くなっているように見える。
よほど、難しい話をしているのだろうか。
なんとなく、花梨の目には久登が寂しげな横顔をしているように映り、視線を逸らすことができなかった。
生まれてこの方、これほどの大企業の息子として生きてきたのなら、人一倍、気苦労もあったのではないだろうか。
花梨は自分と久登がまったく違う次元にいると分かりながらも、なぜか心を寄せてしまうのだった。
『花梨、ホール出てくれる? 回転、落ち着いたら戻ってきて』
『承知しました』
店が開店ししばらく経ったころ、オーナーにそう言われ、一番下っ端の花梨は先輩の後ろを通りすぎ、厨房を抜ける。
店内はすでに賑わいを見せており、足を止める暇もないほどの忙しさだった。
そんな中、オーダーを取ろうとして、花梨ははっとする。
ペンがない。厨房で一度使う機会があり、その際に落としてしまったようだ。
(どうしよう。取りに帰らないと……)
次々とオーダーする客に断りを入れてその場から立ち去ろうとしたそのとき。
すぐ隣の席に座っていた久登が、何も言わずに胸ポケットから一本取り出し、花梨に向かって差し出した。
『これ、使って』
『え……あ、ありがとうございます……!』