【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
「氷室さんは今も私に上っ面しか見せてくれていない気がして。私と氷室さんは対等の関係ですし、気を使わず言いたいこと言っちゃってくださいね」
 彼は私の言葉に面食らったかのように目を見開く。 
「実は私にも兄がいるんですけど、氷室さんのお兄さんと一緒ですごく優秀だったんです。いくら頑張っても兄には全然勝てなくて。そのことに劣等感を抱いていた時期もあって、学生時代は兄が嫌いでした」
「ははっ、ハッキリ言うね」
 氷室さんが笑う。
「でも、大人になってから私は兄になりたかったわけじゃないんだって気付いて。それからは自分を少しだけ認めてあげられるようになったんです。だから、氷室さんも自信を持ってください。あなたは間違いなくすごい人です」
 氷室さんは私を真っすぐ見つめながら「参ったな」と首を擦った。
「そんな風に言ってくれたの君が初めてだ。自分を肯定してもらえるのってこんなに嬉しいことなんだね」
 氷室さんは熱い眼差しを私に向ける。
「偉そうなこと言ってすみません。でも、どうしても伝えたくて」
「じゃあ、俺も本音を言う。学生時代は兄貴が大っ嫌いだった。飄々とした顔で学年一位は当たり前に叩き出すし、全国模試でも常にトップでさ。勉強ではどうやっても勝てなかったけど、足の速さだけはコンマ一秒俺の方が早かったから。それを今も誇りに思ってる」
「コンマ一秒……!」
「あ、あと美的センスも俺の方がいいね。兄貴は絵が下手だった」
負けず嫌いな部分を隠さず露にする氷室さんに私はクスクスと笑う。
「これからは今みたいに本音を曝け出してくださいね?」
 氷室さんは全てが完璧すぎるから、これぐらい人間味があった方がとっつきやすい。
「本当の自分を誰かに晒け出したのは初めてなんだ。こんな俺を受け入れてくれる?」
「えっ? はい。受け入れます」
 私から彼の本心を引きずり出したのだ。引き受けないという選択肢はなくこくりと頷くと氷室さんは「よかった」と安堵したように微笑んだ。
 そこで話を切り、私は気になっていることを尋ねた。
「それから、お兄さんはお医者さんになったんですか?」
「ああ。今は救急医として立派に働いてるよ」
「救急医⁉ 私の兄もです!」
 私の言葉に氷室さんが驚いたように目を見開いた。
「それは、奇遇だね。もしかしたら、知り合いかも?」
「だったらビックリですね」
 全国に救急医は大勢いる。そんな奇跡的なことが起こらないとは思いつつ、笑顔で同意する。
「飲み物、お代わり頼もうか?」
 すると、氷室さんが私のジョッキの中身が少なくなっていることに気付いて、テーブル脇のタッチパネルに手を伸ばした。
「あっ、大丈夫です。お酒は好きなんですが、あまり強くなくて。酔っぱらっちゃうと困るので」
 氷室さんはぴたりと手を止めてこちらを見た。
「もしかして、俺がたくさん飲ませてお持ち帰りしようとしてるって警戒してる?」
「ま、まさか!」
 氷室さんの言葉に私はブンブンッと首を横に振って否定する。
「前から思ってたけど、凛花って男性に対してのガード堅いよね。何か理由があるの?」
 氷室さんは興味ありげに尋ねる。
一郎くんとのことは黒歴史であり、消し去りたい過去で話すのは憚られる。
でも、氷室さんだって自分の過去や弱さを晒してくれたのだ。私はおずおずと話し始めた。
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