【執着兄弟の溺愛シリーズ】内緒の三つ子を出産したら、執念で見つけ出した凄腕パイロットから重たい独占愛を刻み込まれる
今すぐ翔真さんの元へ駆け寄ってどういうことなのか問い詰めたい衝動に駆られる。
 船上で『不安だったらスマホも見てくれて構わない。もちろん、心配なら戸籍でもなんでも取ってくるよ』という言葉はいったい何だったんだろう。
 私を欺くためにあんな大それた嘘をついたんだろうか……?
 そして、私は彼を信じて騙された?
 よく考えれば、彼の部屋は生活感がなかった。あれは私と密会するためだけに借りた部屋だったのだろう。
 そう考えれば、全て辻褄が合う。
 一郎くんの時は食事の段階で彼女がいると知り、関係を断った。けれど、今回は違う。私と翔真さんは付き合い、何度も体の関係を結んでしまっている。
 もしここで私が現れれば、何も知らない奥さんや子どもたちを傷付けることになる。
 何も知らなかったとはいえ、彼の家族を巻き込みたくない。
 今、私ができることは彼から黙って身を引くことだけだ。そうすれば彼は家庭に戻り、今まで通り家族と幸せに過ごせるはずだ。
 翔真さんは奥さんに何か声を掛けて笑みを浮かべる。
 もう彼が私に笑顔を向けてくれることはない。
大好きだったその笑顔を見ていると、どうしようもなく胸が痛んだ。
さようなら、翔真さん。
心の中で呟く。
 彼が私に気付く前に、私は彼に背中を向けて歩き出す。
 今までの彼との出来事が走馬灯のように蘇り、私は歩きながらボロボロと涙を零した。
 目の前が涙で滲む。すると、前方から歩いて来た人とぶつかった。
「すみません……」
 涙を手の甲で拭って謝る。ぶつかった相手は背の高い男性だった。
 相手は驚くほど整った顔付きをしていた。男性は私が泣いていることに気付いて困ったように顔を顰めた。
「あの、大丈夫ですか?」
「……はい。本当にすみません……」
 再度頭を下げて謝ると、私は再び歩き出した。
 その日、私は家に帰り翔真さんの連絡先をすべて消し、電話番号を変えた。さらにジムを退会し彼との関係を断った。
 幸いなことに彼に自宅の場所を知られてはいなかった。こうして、私は彼の前から姿を消した。
 後日、成美には翔真さんと別れたと告げ、事情を話した。
『やっぱりそうだったんだ……。氷室さんってモテるでしょ? だから、前々から色々な女性に手当たり次第に手を出していたみたい。実は私もジムで彼に言い寄られそうになって……。黙っててごめんね』
 成美の言葉が鋭い刃物のように胸に突き刺さる。
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