酔っ払った勢いで子どもを授かりました。って、相手は誰?
 この地に行くようすすめたのは母親だった。大叔母ことダフネは夫に先立たれ、離れで慎ましく暮らしているのだとか。家のことは長男夫婦に任せ、余生を楽しんでいるという連絡をもらったばかりらしい。
 両親が急いで連絡をとったところ「喜んで」と返事が来るのを待たずに、旅の用意は整えられていた。田舎といっても、馬車で二日。エリサリナの身体のことも考え、母親が同行してくれた。
 その間、父はカルデナ侯爵に顔合わせ延期の手紙を書いたようだ。顔合わせ延期からの「この縁談はなかったことに~」を狙っていたらしい。エリサリナが重い病気にかかってしまい、侯爵夫人は務まらないという理由をつけるストーリーまで考えていたようだ。
 とにかくカルデナ侯爵の件は父に任せ、エリサリナはダフネのところに身を寄せた。
 現メラーズ子爵も、エリサリナの置かれた状況を察したのか、あれこれうるさく言ってこない。むしろ、ダフネが元気になったと喜んでいるくらいだ。
 やはり夫との別れは、知らぬうちにダフネの心にぽっかりと穴を空けていたに違いない。ダフネの孫、子爵の子どもたちは大きくなり、寄宿学校に通っているから屋敷に子どもの声はなかった。
 そんななか、エリサリナがリザリアを出産したものだから、リザリアはあっという間に人気者になってしまった。ダフネだけでなく子爵夫妻もリザリアを可愛がってくれる。挙げ句、リュミエール伯爵夫妻も定期的にこちらに足を運んではリザリアを愛で、「リザリアを連れて帰る!」と暴れそうになる父を母がなだめながら帰っていくというのが、恒例になっていた。
< 11 / 30 >

この作品をシェア

pagetop