酔っ払った勢いで子どもを授かりました。って、相手は誰?
「それについては、僕のほうから説明します」
 これは、アイゼルが怒っているときの話し方である。普段より声色が低く、ゆっくり喋るのが特徴なのだ。
「ええと……では、あとは若い二人に任せてってことで、いいかな……?」
 場の雰囲気が悪いと読み取ったメラーズ子爵は、部屋から逃げ出した。となれば、エリサリナはアイゼルと二人きり。いや、使用人が今、目の前でお茶を淹れている。
 トポトポとお茶を注がれる音が永遠に続けばいいのにと願ってしまうくらい、エリサリナは緊張していた。
 だが、その願いも虚しく、自分の仕事を終えた使用人は静かに去っていく。
 室内がシンと静まり返り、淹れ立てのお茶からは白い湯気が立ち上る。
「あの……えっと、アイゼル? よね……?」
「まずは座ったらどうですか?」
 その一声で、自分がまだ立ちっぱなしだったということにエリサリナは気づいた。それだけこの状況が飲み込めず、ぐるぐると考え込んでいた。
「あ、うん」
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