酔っ払った勢いで子どもを授かりました。って、相手は誰?
 アイゼルは悲痛な声を絞り出す。
 一年前といえばリザリアをここで出産したときだ。両親も兄夫婦も慌てて駆けつけてくれたのは記憶に新しい。
「だけど、しばらくして伯爵も何ごともなかったように、いや、以前よりも楽しそうに暮らしているという話も聞いて。いったい、あなたの身に何があったのかと思っていたんです」
 先ほどから聞いていれば、彼はリュミエール伯爵を監視しているかのような口ぶりである。
「父のこと、詳しいのね」
「ええ、リュミエール伯爵家に、人を送り込んでいますから。それでも、あなたの情報は入ってこなかった。伯爵の情報隠匿はたいしたものです」
 父を褒められるのは悪い気はしないのだが、いかんせん、アイゼルの行動がやりすぎている気もする。
「リナ」
 急に愛称を呼ばれ、エリサリナの心臓はドキリと高鳴った。
「二年前、どうして待っていてくれなかったんですか? あなたがいると思ってあの部屋に向かったのに……あなたの姿がなかったあのときの僕の気持ち、わかりますか?」
< 21 / 30 >

この作品をシェア

pagetop