女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉
(……そうだったのですね)

 あの時、アルテミス様が私を睨みつけたのは、私が後から加わった繋がりがない者。

 彼女からしたら、私の存在は、迷惑でしかなかったのでは。
 そう思いを巡らせた瞬間、イリオネスの心に冷たい風が吹き抜けました。

「イリオネス? ちょっと、顔色が悪いわよ。どうしたの?」

 心配そうに覗き込んでくるアフディーの顔さえ、今はどこか遠く、自分とは違う世界の住人のように感じられてしまいます。

 手の中にある、宝石のような飴玉。 アフディーを喜ばせようと、大切に、大切に運んだその輝きが、今はひどく場違いな、子供じみ
たおもちゃのように思えてなりませんでした。

(……私は、何を浮かれていたのでしょう。私だけが、家族だと思い込んでいたなんて)

 イリオネスは、ぎゅっと、手のひらの中の飴玉を握りしめました。

 体温で少し溶けかかったその甘い香りが、今はひどく惨めで、自分を甘やかしている幼さの象徴のように感じられます。

「……イリオネス? 」

 アフディーが心配そうに銀の羽を隠しながら一歩近づきます。
 その優しささえも、今のイリオネスには「部外者への憐れみ」に見えてしまうのです。

「……いいえ。何でも、ありません」
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