女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉
 そして、絶望に膝へ顔を埋めるイリオネスを見下ろし、霧が晴れるような低い声でこう告げたのです。

「私は眠りの神だ。ならば、その専門である……『夢』の話をしようか」

 イリオネスは、ゆっくりと顔を上げました。涙に濡れる瞳で、ヒュピヒュピを見つめます。

「多くの者は、夢を『寝て待つもの』だと思っている。だがね、情景の女神。夢というのは……本質的にはただの幻だ。自ら歩み寄り、その手を伸ばして掴もうとしない限り、夢はいつまでも遠くに浮かび、形を変えて消えてしまう。……君の望む『絆』という名の夢も、同じことだよ」

 彼は一度言葉を止めると、夜風に揺れるイリオネスの髪を見つめました。

「ただ泣いて待っているだけでは、それは手の届かない幻のままだ。……近づこうと前に進み、君自身の手で、その絆の糸を編み上げるしかない。そうだろう? いや、僕はそう思うよ」

 ヒュピヒュピは、そこで初めて、穏やかな笑顔を見せました。
< 17 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop