女神イリオネスと、九ヶ月の飴玉
「そうですね……本当に困ったものですね、あなたの『お姉様』は」

 その言葉を聞き、イリオネスは密かに求めていた言葉を投げかけられ、ハッと目を見開きます。

 耳の先まで赤く染めると、軽く顔を背け、呟くように答えました。

「本当に困ったものです。……私の……姉は」

 その言葉を口にすると、へローラは安心する様に微笑み、イリオネスの顔は困った表情を作りながらも、喜びを噛み締めるように晴れやかな気持ちを、滲み出します。

 その傍らで、最高神ゼオスが「せめて、せめて水性で書いて欲しかった……!」と悲痛な嘆きを上げ続けるのでした。

 使いを終えたイリオネスは、柔らかな綿菓子のような天界の雲の上を、ひとり歩いていました。

 探しているのは、もちろんあの「困った姉」であるアフディーです。

「もう……最高神様に油性マジックで悪戯なんて。きっと今頃、どこかに隠れて笑っているに違いありません。少しばかりでも、注意の一言を言わなければ」

 呆れた独り言をこぼしながらも、その手には、あのヒュピヒュピからもらった飴玉を、そっと載せていました。

 飴玉はあんず色の夕光を吸い込んだかのように、宝石よりも美しく輝いています。
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