配信終了後、幼馴染実況者の本性が悪すぎる
***
ホームルームが終わった後。
凪の特理クラスを覗いたけれど、凪の姿はなかった。
勇気を出して、凪と同じクラスの子に声をかけて聞くと、今日は休みだったらしい。
やっぱり……。
そんな気がした。
私を避けているのか……
SNSの書き込みで傷ついているのかわからない。
――けど。
今の凪が、あの中学生時代の凪と重なって、
胸の奥の不安が大きくなっていく。
また凪がひとりになろうとしている。
そんな気がして。
*
家に帰ると、私はすぐに自分の部屋へ向かった。
背後でお母さんが、「帰ってきたら、ちゃんとただいまくらい言いなさい」って言ってたけれど、返事もそこそこに部屋のドアを閉めた。
そして、そのままベッドへ倒れ込む。
ポケットからスマホを取り出し、
いつもの癖でSNSを覗くと、
私への心配の声と、凪への非難で溢れていた。
「……っ」
ばか。
何で傷つくってわかってるのに見ちゃうの。
つくづく自分の行動が嫌になる。
画面を真っ暗にして、ぽすっと枕元にスマホを置いた。
見上げた天井が滲む。
涙が溢れないように、目を閉じて、両手で顔を覆った。
どうしよう。どうすればいい?
今日も凪の家に行く?
けど、もう、あの時のようには会ってはくれないかもしれない。
今回は、私が凪を傷つけてしまったから。
そんなことをぐるぐる考えていると。
やっぱり脳裏に浮かんでくるのは、あの日の凪のことだった。
*
事件の後、凪が学校に来なくなってから。
私は毎日凪の家に通った。
毎日、「帰れ」って冷たく言われて、部屋にもあげてくれなかったけど、それでも懲りずに通い続けた。
そしてついに――凪が部屋に入れてくれた。
けれど、もうその時。
凪の目には光がなかった。
「毎日、毎日しつけぇな。
いい加減、もう俺に関わんのやめろよ」
低く鋭い声。明確な拒絶の言葉。
多分、その日私を部屋に入れたのは、ちゃんと突き放すためだとわかった。
それでも私は言葉を返した。
「嫌だよ。私は、凪と一緒にいたい」
「うぜぇ。迷惑なんだよ」
「っ」
その言葉に一瞬怯みそうになる。
でもここで引くわけにはいかないと、私は真っ直ぐ凪を見た。
「そもそも、何で学校に来ないの?凪は何一つ悪いことしてないじゃん。本当にいじめたわけじゃないんだから、堂々としてればいいのに」
「……俺は、傷つけることしか出来ねぇから」
「そんなことない…!!
凪は、あの子のことを思ってああ言ったんでしょ?」
凪の肩がピクリと揺れた。
「確かにみんなの前で言ったのはまずかったかもしれない。けど、言ってることは間違いじゃないって思ーー」
「アイツだけじゃねぇんだよ!」
私の声をさえぎる様に凪が言い放つ。
その拳は、感情を抑えるように握られ震えていた。
「え……?」
「アイツだけじゃねぇんだ。俺が傷つけたのは…」
「なに、言って……」
「母さんが、出て行った」
「……えっ」
お母さんが……?
呆然とする私に、
俯いた凪が苦しげに言葉を落としていった。
その時、聞かされた内容はあまりにも衝撃的だった。
――あの日。
喧嘩騒動の時、保護者も呼び出され、その帰り道凪はお母さんと大喧嘩をしたらしい。
凪のお母さんは、バリバリのキャリアウーマンで凪が小学生に上がる前に離婚していた。
仕事が忙しい人で、中々家に帰れず、
凪はよくおばあちゃんの家に預けられていた。
けれど、家に帰らないのは、仕事だけが理由じゃなかったらしい。
凪のお母さんは、意図的に凪と距離をとっていたという。
その理由は――凪が父親にそっくりだったから。
『何でそんな感じでしか人と関われないの』
『凪をみていると、あの人を思い出して苦しくなる』
そんな容赦ない言葉を、学校からの帰り道、お母さんは凪に言い放った。
そして、その時、
カッとなってしまった凪は、感情のままに言い返してしまったらしい。
『だったら――産まなきゃよかっただろ』
「――そん時、母さんすげぇ傷ついた顔してた」
「…っ」
「言っていいことと、悪いことあるって分かってんのに……止まれなかった」
「なぎ……」
「こんな自分が嫌いだ…」
「………っ」
「いつかは、お前のことも傷つけるかもしれねぇ」
「……」
「だから、もう……俺に関わるな」
苦しげに最後の言葉を放ったとき、
凪の声は震えていた。
だからこそ、私にはすぐにわかった。
本心じゃないって。
「……っ、」
けれど、なんて言葉を返していいのか分からなかった。
“そんなことない”
“凪は不器用なだけでいい奴だよ”
“自信をもって”
そんな薄っぺらい慰めなんて、今の凪にはきっと響かない。
――その時だった。