一流御曹司は若い婚約者よりも45歳の私を溺愛する
これまで何度も自分の名前を名乗ってきたけれど、こんなにも美しく、愛おしい響きを持った言葉だっただろうか。

「仁也さんも……とても、いい名前です」

私は自分の言葉に照れながらも、彼から目を逸らせなかった。

静寂が訪れる。店内の花の香りが、まるで私たちの呼吸に合わせるかのように揺らいだ。

言葉は必要ない。

ただ、互いの瞳の中に、言葉にできない何かが通い合っていくような、不思議な静寂だった。

「また来ます、美波さん」

彼はそう言い残すと、名残惜しそうに一度だけ振り返り、店を出て行った。

カランコロンと、ドアベルの音がいつもよりも高く、軽やかに鳴る。

彼が去った後の店内は、まるで別の場所に切り替わったかのように静まり返っていた。

カウンターに残り香だけを漂わせて、彼は去っていった。

私は、彼が去ったドアの方を向いたまま、胸に手を当てた。
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