ほたる先生は振り向かない
「ねぇねぇ、学生時代どんな人だったの?モテた?好きな人いた?告白されたことある?何人くらいと付き合った?」

質問を重ねながら教卓へ身を乗り出すと、先生は明確に少し引いた。

────あ、ガッツリ距離を取られた。
なんか悔しい。

でもまだ教卓には教材が残っている。
ほたる先生が出ていく気配はなさそう。


手早く片付けていく先生の手元は見ないようにして、私は身を乗り出したまま頬杖をついて先生の顔を覗き込んだ。

「先生って絶対、“興味ありません”みたいな顔して普通にモテてたタイプじゃん?隠れファン、いたはずだよ」

「妄想で話を進めないでください」

「じゃあ違うの?」

「答える義務がありません」

「えーっ!教えてよー!」

ついに先生はため息をついて、プリントや何冊もの教科書や書類を抱え直した。

教卓の上が、いつの間にかもうきれいになっていた。


「……岸さん」

「はい」

「受験生ですよね?」

「あー…、まあ、一応?」

「その情熱を、古典文法に使ってください」

「……」

「あと、言葉遣いが気になって仕方ありません」


それに関しては、完全敗北だった。

しかも真顔。
ぐうの音も出ない。


私を置いてさっさといなくなるんだろうな、と思っていたら。

教室を出ていこうとした先生が、ドアの前で一度だけ立ち止まる。


「……ちなみに」

「え?」

「友達は普通にいました」


それだけ言い残して、先生は廊下へ出ていった。


数秒遅れて、私は思いきり教卓に突っ伏す。

「そこ否定するんだ……!」


ニヤニヤが止まらなかった。



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