ほたる先生は振り向かない
人間くさくて
現国の講習は、受講する生徒の人数が古典より多かった。
教室を見渡すと、二十人くらい。
夏休みだというのに、みんなちゃんと来るんだなと思う。
いや、受験生だから当たり前か。
私は一番後ろの窓際に座って、ぼんやりと机に頬杖をついた。
今日の講習には、ほたる先生はいない。
古典の先生なんだからいないのは当たり前なんだけど。
……ちょっとだけつまらない。
「はいはいはいー。全員適当に座れー。暑い暑い言っても涼しくならんぞー」
教室に入ってきた沢村先生は、今日も暑苦しかった。
半袖ワイシャツ。それをさらに腕まくり。
ノーネクタイに第一ボタンを外したワイシャツ。
そして、こんがり日焼け。
夏が人間になったみたい。
先生は持っていた教科書やプリントをポンと教卓に無造作に置くと、早速話し出す。
「今日やるの、評論。共通テストでも出るやつ。嫌いなやつ多いだろー?」
前の方から「はーい」と気の抜けた返事。
素直すぎる反応に沢村先生は面白そうに笑った。
「評論ってさ、難しい言葉いっぱいあるし、眠くなるし、嫌われるんだけど」
と、ここで先生が黒板に大きく書く。
【筆者が言いたいことを探すゲーム】
ザーッと殴り書きみたいに、でも読みづらくはない字でそう書いて、こちらを振り返った。
「俺はこう思ってる」
教室がざわっとして、そして少し笑う。
「それで、今日の課題として例を持ってきた」
そう言って配られたプリントは、現代文の評論。
環境問題とか哲学とか、そういう堅いやつじゃなくて。
『人間の感情は矛盾を抱える』みたいなテーマだった。
……タイミング、悪。
シャーペンを転がしながら、私は問題文を読む。
教室を見渡すと、二十人くらい。
夏休みだというのに、みんなちゃんと来るんだなと思う。
いや、受験生だから当たり前か。
私は一番後ろの窓際に座って、ぼんやりと机に頬杖をついた。
今日の講習には、ほたる先生はいない。
古典の先生なんだからいないのは当たり前なんだけど。
……ちょっとだけつまらない。
「はいはいはいー。全員適当に座れー。暑い暑い言っても涼しくならんぞー」
教室に入ってきた沢村先生は、今日も暑苦しかった。
半袖ワイシャツ。それをさらに腕まくり。
ノーネクタイに第一ボタンを外したワイシャツ。
そして、こんがり日焼け。
夏が人間になったみたい。
先生は持っていた教科書やプリントをポンと教卓に無造作に置くと、早速話し出す。
「今日やるの、評論。共通テストでも出るやつ。嫌いなやつ多いだろー?」
前の方から「はーい」と気の抜けた返事。
素直すぎる反応に沢村先生は面白そうに笑った。
「評論ってさ、難しい言葉いっぱいあるし、眠くなるし、嫌われるんだけど」
と、ここで先生が黒板に大きく書く。
【筆者が言いたいことを探すゲーム】
ザーッと殴り書きみたいに、でも読みづらくはない字でそう書いて、こちらを振り返った。
「俺はこう思ってる」
教室がざわっとして、そして少し笑う。
「それで、今日の課題として例を持ってきた」
そう言って配られたプリントは、現代文の評論。
環境問題とか哲学とか、そういう堅いやつじゃなくて。
『人間の感情は矛盾を抱える』みたいなテーマだった。
……タイミング、悪。
シャーペンを転がしながら、私は問題文を読む。