宅配業者のお兄さんは前腕の血管が誰より浮き出ているので――フェチがバレたらなぜか激愛で囲い込まれました
「舞園さん、お疲れ様」

 今日の仕事を終え事務所を出たところですぐ、唐木さんが私に声を掛けてきた。
 白いTシャツにジーンズという、ラフな姿だ。だけど、そのほうがありがたい。

「お、お疲れ様です」

 私は言いながら、彼の服の袖から覗く前腕に視線を落とした。
 美しい前腕だ。浮き出る筋肉と血管が、今も完璧な状態でそこにある。

 頭上からくすりと笑い声が聞こえて、私は顔を跳ね上げた。

「すみません、つい」

「いいんだ。いや、よくないけど」

 彼の言葉に首を傾げると、彼は「今日も自転車?」と聞いてくる。

「はい。取ってきますね」

 人の少ない夜道を、自転車を押しつつ唐木さんと並んで歩く。

「クッキー、ありがとう。甘いもの、好きなんだ」

 そう言う唐木さんは、なんだか本当に嬉しそうな顔をしている。
 自分の手作りを褒められると、それだけで気持ちが軽くなる。

「ありがとうございます。お口に合ってよかったです」

 言いながら、恥ずかしくなって自転車に目をやった。
 褒められたことは素直に嬉しい。けれど、恥ずかしい。だって、あのクッキー……。

「まさか、ダンベルや力こぶの形とは思わなかったよ」

 言いながら、唐木さんが笑う。

「すみません、唐木さんにぴったりだと思って」

 声が小さくなってしまった。が、唐木さんは笑いを収めた。

「本当に、俺の前腕が気持ち悪いわけじゃなかったんだ」

「だから、それは……」

 言いながら、再び恥ずかしくなる。
 昼間に彼に早口で伝えたことを、思い出してしまったのだ。

「ねえ、本当に触ってみる?」

 唐木さんは立ち止まり、私を見下ろす。
 それから、私の目の前に、彼の逞しい前腕が現れた。

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