宅配業者のお兄さんは前腕の血管が誰より浮き出ているので――フェチがバレたらなぜか激愛で囲い込まれました
 おそるおそる手を伸ばすと、彼の左手が私の手首を導く。
 やがて、彼の前腕に触れた。彼の青筋がくっきりとしていることが、指ごしにしっかりと伝わってくる。

「す、すごい……」

 すると、ふふっと唐木さんが笑った。それで、慌てて手を跳ね上げる。

「すみません、調子に乗りました!」

 私は自転車のハンドルに手を戻し、そのまま足早に歩き出そうとした。

「違うんだ、かわいいなと思って」

「え……?」

 見上げると、彼は街灯の下で優しく微笑んでいた。ちょっとだけ、恥ずかしそうに頬を染めながら。

「ずっと、舞園さんが気になっていたんだ。だから、君に嫌われたくなくて……長袖にした。でも、君が俺の前腕が好きだと言うのなら、近づくチャンスだと思った」

 思わぬ言葉に、私の鼓動は急激に高鳴る。
 唐木さんが、私のことを、意識していた……?

 驚きなにも言えず、視線を落とす。私の視線の先に、彼の前腕が映った。
 この逞しく美しい前腕の持ち主である彼が、私を、好き……。
 
 思考が追いつかない。だけど、嫌じゃない。むしろ――。

 トクトクと胸が甘く高鳴り、どうしていいかわからない。そのままなにもできないでいると、彼の腕が急に持ち上がった。
 そのまま彼の手が私に急接近する。と思ったら、そのまま顎をすくい上げられた。

「舞園さん。君には俺の前腕だけじゃなくて、俺自身のこともちゃんと見てほしい」

 唐木さんはいつもの爽やかな笑顔ではなく、真剣な顔をしていた。
 ドクドクという音は、彼の腕から伝わってくるものなのか、それとも私の鼓動の音なのかわからない。

「嫌だったら、逃げて」
 
 そのまま、彼の顔が近づいてくる。だが彼の顔が目前に迫ったところで、彼は動きを止めた。

「なんて、ね。続きは、ちゃんと答えを聞いてからさせて」

 彼はいつも通りの爽やかな笑顔を浮かべている。だけど今夜は、その笑みの中に狩りをする鷹のような光が見えた気がした。 

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